約10年ぶりに佐渡へ日帰りで行ってきた。新潟から両津までジェットフォイルで1時間。お盆は初めてだ。墓の上に蓮の葉をかぶせていたり、仏壇の上に草で屋根をかける様子など、はじめて見る習慣もあった。墓については多くのところでそうだったが、蓮の葉が被さっているところと、そうでないものが同じ墓地の中にあって、何かかぶせ方に意味があるのかも知れない。集落ごとにも習慣が違うのだろう。ある集落では、玄関の前に仏画の描かれた灯籠の建っているところもあった。 2時間ほど時間が余ったので、島内巡りに行く。もちろん、周囲が200キロ以上有る大きな島なので、ごく一部しか見られない。出発点の両津は砂州に発達した町で、夷と湊の二つの港が有るこ とから付けられた名前である。安政の開国の時には新潟港の補助港となり税関もあった。二つの砂州の背後には加茂湖という湖がある。それまで淡水湖だったが、明治時代に海への水路を広げたことで汽水湖となった。今は牡蠣の養殖で知られる。 久知にある長安寺へ向かう。この付近は中世の佐渡の政治の中心地で寺も栄えたが、上杉景勝に地頭が滅ぼされて、寺も衰退した。朝鮮鐘のある寺で知られる(詳しくはHPで紹介)。近くの川は暴れ川でも知られていた。今は蛍の川でもある。さらに内陸に入る。 山下清の母親の生家跡(記念碑あり)を通り過ぎて、清水寺(せいすいじ)へ向かう。京都の清水寺を模した寺で、808年に建立されたという。入り口から階段を上ると、山の斜面に清水の舞台がある。京都のものより小降りであるが、仏像の配置や舞台の作りなどとてもよく似ている。このように京都や奈良を模した寺も多くあり、今回は行けなかったが奈良の長谷寺を模した長谷寺(ちょうこくじ)などもある。 続けて、佐渡に流された日蓮が半年滞在した塚原山根本寺を見る。佐渡金山を開拓した人の墓も残されている。ここを出た後、トキの森公園を見る。現在トキが80羽ほど育てられているとのこと で、遠目に檻の中でトキの舞っている様子を見ることが出来た。この森の出口には白山神社がある。 トキの森と海岸段丘を挟んで挟んだ反対側には牛尾神社がある。安産の杉、能舞台などとともに(佐渡は民間芸能として能が盛んである)、拝殿の彫刻群が知られる。横に渡されているはりに彫られているが、向かって右側には鯉の透かし彫りが彫られ、正面に来ると、それが竜になっていく。その流が拝殿手前の階段にそって、拝殿に上っていくように彫られる。まさに、「登竜門」伝説そのものの姿である。ちなみに拝殿向かって右側は玄亀が彫られている。 ところで、この神社の名前はもともと「八王子牛頭天王社」といった。この神社の場所が近江日枝神社領新穂荘の鬼門にあたるという指摘もある。牛頭天王の額は大阪枚方の百済王神社にもあるが、素戔嗚尊が韓国のソシモリに降りてきたという伝説(ソ=牛、モリ=頭)に関係あるといわれる。牛尾神社も素戔嗚尊が祭神の一つとして祭られている。
佐渡にも渡来人の関係を示す物が多いようだ。近くの畑野は秦氏との関係が指摘され、そこの賀茂神社も新羅との関係を指摘するものがある。先ほどの長安寺も渡来人との関係があるのではないかとも言われている。そんなところを見ながら、両津港にもどった。港の脇には五泉から村松まで走っていた蒲原鉄道のものとおもわれる廃車体がおかれていた。(佐渡に鉄道はない)。 帰りのジェットフォイルは、途中の大雨による視界不良のために一時ジェットでの運航をやめていた。もともと小型船で水中翼を使って、飛行機のように水面から船体を浮上させて時速80qで滑空する船だから、ジェット運転をやめれば…ただの波に揺られる船である。スピードも15qがやっとだった。
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