1.インド世界 (インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディヴ) 仏教はインドで発生した。この地域の気候はモンスーン気候で、肥沃な土地で農業に有利。 周囲を山、砂漠、海に囲まれているため、閉鎖空間である。 多くの民族が、周囲から肥沃なインドを目指して入ってくるため、独自の文化が醸造される。 そのため、言語数が非常に多く、4qごとに言葉が変わると言われている。
2.インド文化の原型 すでに紀元前2300年から1800年頃、モヘンジョダロを中心にインダス文明が起きている。 すでに、大地母神、生殖信仰、樹木(菩提樹)信仰、輪廻転生、静坐瞑想(ヨーガ)、 宗教的沐浴の習慣があった。
この地に紀元前1500年頃アーリア人が入ってきた。 白人でドイツ人、イギリス人などと祖先は一緒。同じインドヨーロッパ語族を話す遊牧民であった。 彼らは定住して、支配的な立場になっていった。
3.バラモン教 アーリア人社会はカースト制度とバラモン教によって特徴付けられる。 @カースト制度 彼らは人びとを4つの姓(ヴァルナ)に分けた。 バラモン:祭祀階級 クシャトリア:王族、武人 ヴァイシャ:庶民 シュードラ:奴隷階級 ア・ヴァルナ(アーリア人でない人。アは英語のun):不可触民
ア・ヴァルナは自分たちではダリットと呼ぶ。その解放運動を行った人がガンジーである。
現在インドではカースト制は廃止されているが、社会的に消えているわけではない。 実際は非常に細かいカーストに別れていて、クリーニング屋のカーストに生まれてきたら 一生クリーニングに従事しなければならない。 カーストを越えて外の職業を選択したり、結婚したり、食事することは禁止される。 かつてインドに留学した日本人が粘りのある米を買おうとしたら、 これは下の階級の人が食べる物だから売れないと言われた話を読んだことがある。 このように一生がカーストの中に縛り付けられるから、 この世は基本的に「苦」であることになる(日本、中国は現世は「楽」)。
バラモン教 バラモン至上主義で、バラモンによる祭祀中心主義の宗教である。 経典はヴェーダ。知識と言う意味。神は自然とその威力を擬人化して信仰する多神教。 この中の雷霆(インドラ)は仏教に組み込まれて帝釈天となる。 また、天人はdyunusと呼ばれるが、印欧語族共通にこれに近い名前がつけられている。 ギリシアではゼウス。
紀元前600年頃から、主に王族からバラモン至上主義に対する批判が出てくる。 インドの社会構造が変わったためである。この中から仏教なども出てくるのであるが、 バラモン教も自己の教義などを深化させるようになった。 その中で出来上がった物がウパニシャド(奥義書)、バラモン教の哲学である。 紀元前7世紀頃の成立。それによると (1)輪廻転生 宇宙は無限の循環で有り、人の魂も永遠に輪廻転生する。 人の霊魂は死ぬと月に行く。 しかし、月は半月ごとに広くなったり狭くなったりするから、狭くなったときに地上に落ちてくる。 それが植物と食事を通して男性の体に入り、そこから女性の体に移って、生まれてくる。 生まれてきた人はいずれかのカーストに属するが、それは前世の業(カルマ)によって決まる。 すなわち自業自得なのであって、自分の行ったことに対する因果応報なのである。 このようにしてカーストを正当化する。 一方で人は自分の行った「何らかの」業で将来が決まるから、びくびくしていなければならない。 したがって、現世は「苦、苦悩」ということになる。
(2)梵我一如。 この輪廻転生の苦悩から脱するためには解脱して、魂が月の向こうに行ければ良い。 そのためには宇宙の本質であるブラフマン(梵)と、個人の魂であるアートマン(我)が、 もともと一体のものであると言うことに気がつけば良い。 アートマンもブラフマンの一部であるからである。 それに気がつかないから、月に行って、また落ちてきてしまうのである。 そのことに魂が気がつかなければならず、 そのために俗世間から離れて厳しい修行をしなければ行けないと説く。
仏教は、このような考え方を批判して登場してきた。
なお、バラモン教とインドの民俗信仰が融合して9世紀頃成立した宗教がヒンドゥー教である。
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