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2014年7月14日
新暦、月遅れ、旧暦(お盆を題材に)

7月13日。東京はお盆の入り。
7月に死者が地中から出てくるという発想は、仏教や道教と関係なく、東アジアに共通する感覚だという。お盆はこのような感覚と、儒教の祖先祭祀、仏教、道教が習合した「日本の」仏教行事である。

もともと7月の行事だから、新暦(太陽暦)では梅雨明け直前の7月に行われるが、本来は旧暦(太陰太陽暦)で行われていた行事である。旧暦の7月15日はもっと後だから、月遅れの「8月お盆」の方が伝統的な感覚は近い。実際、東京でも、区部から市部に入ると「8月お盆」の地域が増えるし、区部でも、地方出身の人は「8月お盆」で行う人も多い。

だが、最近は旧暦そのものでお盆や正月を行うという話は聞かなくなった。子供の頃は月遅れでなく、旧暦でお盆や正月を行う話題をニュースなどで取り上げていた記憶がある(実際には旧暦の地域もあるのかもしれないが)。お盆が旧暦8月15日だとすると、満月とも関係あることになるが、その辺との関わりは薄れているのかも知れない。

一方、中国や韓国では旧暦は強く生きていて、お盆にあたる秋夕(清明節)や、正月は旧暦で祝っている。旧暦でないと正月の気分が出ないという人も多い。韓国で、1月1日に、「새해 복 많이 받으세요(新年、たくさんの幸せを得られますように)」と言われて、あわてて「새해 복 많이 받으세요」と挨拶した人を見たことがある。その人の中では1月1日は新年という印象ではなかったのだろう。
 
旧正月を向かえて「真の○○年になった」という記述を見たこともある。また、誕生日も旧暦で祝うことが多く、誕生日を尋ねるときは、それが新暦か旧暦かを確認しなければならない。

そこからすると、旧暦に関する感覚が、日本と中韓でかなり違うことが分かる。中韓では新暦と旧暦が生きている。そして、伝統行事については旧暦の感覚の方が強い。一方で、日本は新暦、月遅れ(擬似旧暦)、旧暦の3種が行われていたが、旧暦が月遅れに収斂してきたといえるように思う。

月遅れは、中韓では聞かない日本での感覚で、旧暦がほぼ一月遅れになることから、新暦の日付の1月遅れで行事を行うというものである。8月7日の七夕、8月15日のお盆がそれにあたる。擬似旧暦ではあるのだが、結果的に新暦の日付で月遅れを行うのだから、新暦に収斂したと考えても良いかも知れない。

そういう意味では、日本では旧暦の感覚が残りつつ、それが新暦に収斂して、旧暦と言うことを意識しつつあると言っても良いかも知れない。よく「家の地域は8月お盆だから、東京の7月お盆は実感がわかない」ということを耳にするが、これはそのことの裏付けのように思う。

ちなみに、韓国の秋夕は日本のお盆にあたる行事であるが、こちらは旧暦8月15日に行われる。日本では十五夜である。秋夕はお盆ですというと、一見内容は理解出来るのだが、日にちが一月ずれることが分からなくなる。これも8月15日に「8月お盆」をすることとの混同であるとも言える。…実際は「8月お盆」の方が盛大だから、混同も仕方ないとも言えるが。

Posted by hajimet at 23:26 | Comments (0)

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