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2014年6月24日
倫理 20140624 自然哲学(2)
Aアナクシマンドロス(ca.BC 610-ca.BC 546))
 「万物は無限(ト、アベイロン)である
アナクシマンドロスはタレスの弟子。師のいうとおり万物の根源が水だとすれば、星と我々大地の間は水で満たされなければならない。しかし、実際は空間である。大地は宙に浮かんでいると考えるべき。同時に、海岸線が存在し、海岸線の向こうは水で満たされているが、こちら側は水がない。即ち、水は有限である。また、水は熱くなったり冷たくなったり、性質が変わる。このようなものを根源とすべきでない。アルケーであるものは、有限でなく、性質の変わらないものでなければならない。そこで、万物の根源を形も分からず、見えない無限(無限定)のものとした。すべての物は、ここから発生し、ここに戻る。なお、アナクシマンドロスは「カオス」からこれを想定したとされる。

このような考えはアナクシマンドロス独特のものではない。東洋でもある。風水が流行していて、どういう色の服を着れば良いとか話が出ているが、実際は、それによって良い「気」を受けるためのこと。気は太極から発生し、陰陽に別れ、五行にふれて流れ出す。すべての物は気によって作られる。

ところで、Bアナクシメネスは、見えなく無限のものとして、空気をアルケーであるとした。空気が薄くなると火が起きるなど熱がでる。また、空気が濃くなると、風や雲ができ、さらに水、土、石など冷たいものが出来るとした。

Cピュタゴラス(ca.BC 582-ca.BC 497)
自然哲学の舞台は南イタリアに移る。これまでと視覚の異なる立場ができた。
ピュタゴラスは「万物は数である」とした。

A+B=Cは具体的に存在するが、A二乗+B二乗=C二乗が成り立てば直角三角形であるという二乗の世界は「真理」であっても、この世には存在しない。すなわち、三辺比が各3,4,5であっても、3+4≠5であるだけで、9+16=25の関係にならないのである。また、99,4900,4901が直角三角形になり得るのは、二乗をしてみないと分からない。すなわち、真実は見えない所にあるのである。

ピュタゴラスはピュタゴラス教団という新興宗教を信じていた。これはアジアの思想の影響を受けたオルフェウス教(アポロン、黄泉の世界の逸話)の色彩が濃厚。魂の再生を真寺、輪廻転生を信じる。輪廻転生するということは、生まれたこの世は「苦」である(自分たちが、生まれ変わったとして、再び受験勉強をするのは、きっと「苦」だろう)。輪廻転生から離脱するためには、魂を浄化して、天上界にいかなければならないと考える。

我々は深く寝ていても、浅く寝ていて夢を見ても、起きていても、死の瞬間も、それが自分であることは分かっている。即ち、「私は『私』である」。『私』は魂である。それが「肉体の牢獄」に閉じ込められている。生まれ変わるまでの「私」は感覚がないが、「牢獄」に閉じ込められて感覚が生ずる。即ち「苦」である。

どの肉体に生まれ変わるかは前世の状態によってきまる。だから、犬に生まれ変わることもある。ピュタゴラスは、殴られた犬を「かつて自分の友達だった」と言って助けたが、これもこのことを反映しているのだろう。

さて、魂を浄化するためには、魂を天上界と調和(harmonia:ハルモニア)させなければならない(cf. philen+harmoni(philharmony), philen+aderphos(Philadelphia:兄弟愛), philen+anthropos(ghilanthoropy人類愛=博愛)。

一つは体を調和させるために医学を重視し、もう一つは音楽を重視した。
音楽はオルフェウス信仰から来るが、それとともに音楽が数で表せるからである。
協和音の振動数は整数比の関係で表すことが出来る。

ここから、すべての物は数の関係に基づいて存在していると考えた。

たしかに、理系のことは一切のことを数の関係で表そうとしている。その点から、ピュタゴラスの考えはおかしいものではない。

さらにまとめるとタレスからアナクシメネスまでは、事物の根源をものに求めようとした。一方ピュタゴラスは事物の根源を原理や型に求めようとした。

我々の体が何から出来ているかということは「もの」に根源を求めることが出来るが、我々の意識が何から出来ているか、理想としているものについては、「もの」には求められない。これらは現実にものとして存在していないからである。ギリシア思想はこの二つの流れがある。それが重なるのはアリストテレスまで待たなければならない。
Posted by hajimet at 14:00 | Comments (0)

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