趙鏞殷

楼院

篁芳里を出た、一行は12㎞ほどはなれたカラビ市場で昼食を取った。7時に出発したのに、ここで昼になったのは「どれだけの遅さか。父母の郷邑を離れるのだ。故郷の山はすでに遠く、心はますますうらむ」と書いている。ここで食べているときに、にわか雨が降ってきて、前の川が溢れて渡ることが難しくなった。それをやっとの事で渡って楊州へと向かっていった。

楊州から、道は現在の京元線に沿って南下する。趙鏞殷たちは、南下中に夕暮れとなり、楼院で宿泊した。宿泊しながら、他郷(日本）での寝食のことを考えていた。朝早く起きた趙鏞殷は新たに秋の声を聞くが、この日は旧暦の7月1日であった。「三角の高くそびゆる様子を見るが、目に触れるものすべてが悲しい。四方の広大さを望むがため息しか出ない」と書いている。

楼院は、楼院（議政府市虎院洞)と、上楼院(ソウル市道峰区道峰洞)に別れる。上楼院は京元線道峰山駅か道峰山への登山口の集落である。この付近は、道峰山があるために谷が狭くなるため、交通の要衝であった。趙鏞殷達の歩いてきた道は、日本海側の元山から通じるもので、朝鮮時代から商人が頻繁に往来していた。楼院はソウル入り口の関門で、ここで問屋が商品を買い取り、ソウルに運んでいた。そのような所であるから、現在も軍事的にも要衝である。

道峰山はソウル市民がハイキングに来る山で、いくつかの岩峰で出来ている。しかし、京元線から見ていたら、楼院付近では岩峰が重なって、1つの三角山に見えることが分かった。このときは気候条件と周囲の状況から写真が撮れなかったが、2009年に少し離れた47号線から撮影した。


朱内駅付近。カラビからの道が合流する	議政府市内	地下鉄5号線長岩駅(麓が楼院)

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