趙鏞殷

**大木(南面のケヤキ)**

8月19日、趙鏞殷はソウルへ戻る。門をでた三兄弟を追って、祖父、父、母たちがついてくる。趙鏞殷は後ろを振り返らず、足音だけでそのことを信じた。家族は村の入り口、胎封の麓の大木の下まで来て、彼等が去ることを見ていた。趙鏞殷も感極まって言いたいことが言えず、祖父はマグサの片隅でぼおっと立っているだけだけであった。村を外れて、振り返ると、まだこの大木のところで見送っている。

緩やかな下り坂だった趙鏞殷の家の前の道は、途中から急になるが、20mほどほど下りた所が入り口である。直線で200mほどである。現在は道が付け代わり、急坂の部分は耕地になっている。道はさらに谷伝いに南進していた。村の入り口に大きなケヤキがある。村のシンボルである。高さ21m、周囲12mで、樹齢850年と推定されている。

大正時代の地形図を見ても、この付近には針葉樹林と灌木しか書かれていない。あえて大木と言えるほどの熙ではないようだ。したがって、趙鏞殷らを送った家族が立ち止まった木も、このケヤキであろう。

胎封は、高麗時代王族の子供の胎盤を埋めた場所と伝えられている山である。古来より朝鮮には後産のものを、吉地に埋葬する習慣があった。朝鮮王朝の当時のものは、昌慶宮で見ることが出来る。

なお、このケヤキの周囲に近年中に趙素昴の記念館が出来る予定で、すでに土地の買収と揚州市の承諾を取ってあるとのことである。


ケヤキ（奥が胎封)	ケヤキそばの集落	中央奥の林付近が趙鏞殷の家跡

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