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2.マニュアルは必要ない
  ナーダム祭の前日、添乗員と現地ガイドが会場の下見に行って打ち萎れて帰ってきた。誰に訊いても始まる時間も競馬のコースも分からないと言う。また人によって違った答えが返ってくるとのこと。
 村長?にも訊いたが「ナーダムは誰が優勝するかが大事なことであり、競技が何時に始まろうと、どこを馬が走ろうがそんな事は大事ではない。天候とその時の事情でコースなどは臨機に変更する」と言われたそうだ。

 日本のこのような大会では、先ず企画書が作られ事前に詳細なミーティングが何度も行われ、印刷物になって周知徹底されるがモンゴルではそのようなことはない。

 競技参加者は当日に受付に行きその場でエントリーしているようだ。そして条件が揃うとその時に競技が始まる。
 競技は観光客のためではないから事前に時間やコースを発表する必要もないし、また発表も出来ない。

 モンゴル人は長年の伝統あるやり方を身につけて理解しており、特に説明は必要ないようだ。大体印刷物で理解すると言う習慣がない。
 
 それだけに口約束は契約書と同じであり、口約束を破った人は信義に劣るとして激しく非難軽蔑されるとのこと。言動を忠実に守ることはモンゴル人の美学である。

 話は変わるが夕方遊牧民の民家の近くでずっと様子を見ていた。男の子達は馬や羊を裸馬に乗って巧みに誘導し、女の子達は馬の乳を搾りまた井戸に水を汲みに行く。子供達も結構忙しいが、次から次にいろいろな用事をこなしている。
 そばで大人が命令しているのではない。黙っていても子供達は当然のように自分の役割分担をこなしている。しかも楽しそうに仕事をしている。

 日本では、躾にしろ習い事にしろマニュアル通りに出来ない子供を母親が怒鳴り散らしている。マニュアルは各子供の個性に適合したものではないし、その場の状況に適合したものでもない。マニュアル作成者の思い上がりもあれば身勝手な説明もある。子供が可愛そうだ。
 4月に旅行したブータンでもここモンゴルでも親に怒られて子供がいじけている場面を見たことがない。

 小さな男の子も女の子も馬を自由に乗りこなしている。彼らの乗馬指導は親がするが、乗馬方法の印刷物のマニュアルがある訳ではないが何時の間にか身につけている。日本のように先ず座学があり、引馬、並足、駆け足とそれぞれ決まった時間の練習をこなさないと次のステップに進まない教育システムとは全く異なっていると思う。
 
 私も生まれて始めて遊牧民のゲルで乗馬してみたが、いきなり私が乗った馬が遊牧民の子供が乗った馬にロープで誘導されてとことこと歩き出した。早く歩くと馬の背中が上下に揺れて怖くなるので何回もゆっくり歩くように子供に合図した。
 日本の乗馬クラブではここまでの乗馬でも、多分数回のマニュアルに沿った練習が義務付けられ、しかも高い金を取られると思う。

 マニュアル作成とマニュアルに基づいた指導・理解が全ての日本人とは、思考・行動形態がモンゴル人は異なるようだ。 続く

                           平成16年7月16日 記