オオクワガタの仲間(その2)
ヒメオオクワガタ
産地 日本
体長 ♂28〜58o ♀28〜43o
標高の高い山地に棲むクワガタ。ヤナギの木につく。
生息地の気温が低いため、昼間に活動する。
飼育について
ヒメオオクワガタの飼育は、最も難しい部類に属し、 繁殖の技術はま
だ確立されたものがない。 一時、 標高が高い所に棲む種類であることから、 気圧を低くしてはどうかなどと言われていた。 しかし、 最近昆虫フォーラムにおいて報告された成功例によると、気圧は関係無く飼育環境を低温 (20度前後) に保つ事が一つのポイントになるようだ。
トピックス
採集に行くと、 ヤナギの木の枝の先に付いている事が多いらしい。高い位置に居る事が多く、採集に虫取り網が必要になるという、ちょっと珍しいタイプのクワガタである。
写真は長野産。名前のごとく、どこか優しい感じのするクワガタである。
ヒラタクワガタ
産地 日本
体長 ♂29〜81o ♀20〜44o
一口にヒラタクワガタと言っても、幅がとても広い。外国産のオオヒラタも同一種であり、日本産のヒラタクワガタとは亜種の関係にある。ここでは特に日本産のヒラタを指す。 また、 日本にいる亜種の間でも体長は随分と異なり、最大となるのはツシマヒラタでこれまでに81.4oという記録があり、本土ヒラタでは73.4oが最高とされる。
飼育について
ヒラタクワガタ全般に共通する事として、高湿度を好む。成虫は高湿
度に保つ事により寿命が長くなり、♀は卵を産むようになる。産卵木はやや柔らかめのものを選び、二晩ほど水に漬けて水分を沢山含ませてから使うと良い結果が出るようだ。
トピックス
最新のDNA研究で、日本のヒラタクワガタには2系統存在する事が明らかにされた。 本土ヒラタの系統とツシマヒラタの系統で、それぞれ南方の島伝いと北の大陸から進出してきたものと考えられている。面白い事に本土ヒラタの系統は単純に北進してきた訳ではなく、 一旦日本列島に達してからもう一度島伝いに南下したように見えると言う。このあたり海進や海退を繰り返した古代地理と深く関係しているようだ。
ただ、南西諸島からやや離れた位置に分布するダイトウヒラタについては、 ツシマヒラタの系統により近く、 その説明が困難であるらしい。まだまだ謎の多いクワガタである。
写真は京都産の32.7oの個体。湿度の高い場所を好み、河川敷などに多い。この個体も川沿いのクヌギの小さな洞で採集した。しかし、残念ながらその木は伐採されてしまい、今は無い。
写真はツシマヒラタのF2個体。ツシマヒラタは朝鮮半島を経て中国大陸から進出してきた種類で、イキヒラタ、ゴトウヒラタなどもごく近い種類である。本土では、九州北部と山口県北部に同系統のヒラタクワガタが分布する。 一見してパラワンオオヒラタに酷似するが、DNA解析によると直接の関係はなく、いわゆる他人の空似という事らしい。
写真はサキシマヒラタのF1個体。サキシマヒラタは沖縄のさらに南にある先島諸島に分布する。飼育で簡単に大型個体が出せるという事から一時期大変もてはやされた。 しかし、あまりに増えすぎるためか、あるいはより大きな外国産ヒラタが簡単に手に入るようになったためか、現在では人気を失っている。
スジブトヒラタクワガタ
奄美大島・加計呂間島・請島 ・徳之島に分布するヒラタクワガタの仲間。ただし、亜種ではなく独立した種として分類されている。背中の太い筋が特徴であり、力強いフォルムと相まってファンが多い。
飼育について
スジブトヒラタの飼育については、容易とする説と難易度が高いとする説とが相半ばする。 コツを掴んだ人にはさほど難しく感じない種類のようだ。我が家ではヒラタクワガタと同じセットで飼育しているが、 なかなか幼虫の数が採れない。また、 どういうものか♀が少なく、累代に支障を生じているのが現状である。
トピックス
スジブトヒラタは、ヒラタクワガタの中でも古い系統に属するようだ。現在のヒラタクワガタは、アルキデスヒラタクワガタを祖型にして様々に分化してきたと考えられているが、その中でもスジブトヒラタはかなり早い時期に分化したものらしい。それがなぜ奄美大島などごく限られた地域にだけ分布しているのかは、謎である。
産地 日本
体長 ♂30〜65o ♀27〜43o
写真はスジブトヒラタクワガタの61.5oのF1個体。その特徴である背中の筋は、大型化してくるにつれと段々と目立たなくなってくる。
チョウセンヒラタクワガタ
産地 対馬
体長 ♂23〜65o ♀27〜43o
その名のとおり、朝鮮半島に多く棲むクワガタで、日本では対馬にのみ分布する。
飼育について
トピックス
チョウセンヒラタは、マット産みをする。以前飼育していたときはケースの底にノコギリクワガタのようにいくつも卵を産み付けているのが見られた。ところが、回収できた幼虫はわずかに2頭に過ぎなかった。なぜか。その原因の一つは、♀による幼虫の補食にあった。幼虫を回収すべくマットをひっくり返したときマットから出て来た♀は初令幼虫を大顎に銜えていた。ドルクス系にはしばしば見られるというが、あまり見たくない光景である。
チョウセンヒラタは、 ツシマヒラタと同所的に分布するが、 上手く棲み分けが成立している。場所ではなく、 時間的な棲み分けを行っているという。 両者が交雑する事はまずないが、希に雑種が見つかる事もあるらしい。
写真は我が家で唯一羽化した個体。累代は不明。この個体は菌糸で育てたもので、大顎の特徴が良く出ている。