佐原:大須賀川

千葉県佐原市。利根川の河口から40qにある都市である。常総台地と利根川に よる沖積地からなる。常総台地の上は水不足、沖積地は利根川の水が逆流することによる湛水地であった。収穫も一定しない。大須賀川は上流からの水を流し、 利根川に排水する川であるが、利根川の水が増えることによって、排水できずかえって周囲の水田を3日も、4日も水浸しにすることが多かった。

このような水の状況のため、第二次世界大戦前、大須賀川を直すことにした。地 形や文献からすると、おそらく元の川筋を拡幅、直線化した物であろう。戦時中であるため、工事の状況はよく分かっていない。

大須賀川の河口は両総用水の取り入れ口につながっている。こちらは昭和16年 に請願、18年工事開始で、第一期が完了して通水したのが40年である。工事計画は一体のものであったと思われる。大須賀川の水を両総用水にまわせば、水 は利根川の方向に流れなくなり、利根川の水位の影響を受けにくくなるからである。

大須賀川は別名「朝鮮川」ともいう。この名で普通に通じるようだ。工事中多く の朝鮮人がいたこと、飯場を解体したところ、多くの牛の骨が出てきたことなどの話が聞けた。地元にとって、今でもこの名前が残っていたと言うことは、よほ ど印象が深かったのだと思われる。千葉県のこのような土木工事でも、朝鮮人労働者が多く使われていたが、そちらではむしろ、一緒に働かされていた囚人など のイメージが強く残っているようだ。どのような工事の形態だったのか、なぜ、名前が伝えられているのかなど、調べてみる必要がありそうだ。

遠く利根方面を見る
この先にもう1本排水河川がある
上流方面
左手:(おそらく)利根川の自然堤防
下流方面
田植期には堰で水を止めて湛水させる

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