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8.近代化
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 新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市内の人口は約200万人でその8割が漢族である。 解放前は人口8万人でウイグル族のみであった。毛沢東の方針で北京や上海から大量の漢族が新疆開発のため送り込まれたと言う。

 ウルムチ市内にウイグル人街がありバスで通ったが、現地ガイドが新疆最大の立派なバザールが右手に見えると説明した。なるほど近代的で巨大なレンガ造りの建物があり、内部は相当賑わっている感じだった。使用料を払ってバザールが経営されているとのこと。以前はヤルカンドのような屋台形式を中心としたロバ車と埃にまみれた雑踏のバザールがあったのであろう。ここでは既にウイグルらしい風景はなくなりつつある。人口比からしても周囲は漢族である。

 カシュガルは95%がウイグル族の街である。しかしこの街のバザールも現在新築中であり、訪れたのは仮居のバザールである。直線の雑踏が延々と30分位続いていた。来年の観光客は新築のバザールを見物することになるのではないか。市内の住居区も区画を区切ってブルドーザで更地化しアパートを建設中である。

 日曜日は日曜バザールが開かれ、早朝から農民がロバ車で農産物を運び込み、夕方農村の自宅にロバ車で帰って行く。夕方ロバ車が農村に帰る時刻に我々のバスはカラクリ湖からカシュガル市内に帰ってきた。物凄いロバ車の列であり道路は混雑している。バスは警笛を鳴らし続けながら走った。無音で走るロバ車と警笛を鳴らし続けるバスはお互いに融けこまない。近代化に感覚的に追いつけない層もあると思う。

 ホータンからニヤへの途上でケリヤに小休止した。現地ガイドの予定ではこの幹線道路沿いに前回は楽しいバザールがあったのでそれを見せようとしたらしい。ところがバザールはどこかへ移転し、そこはトラックが行き交う広い三叉路になっていた。

 シルクロードの時代は砂漠の中にポツンとオアシスが存在し、それを頼りにラクダの隊商が移動した。しかし現代の機械化工事による緑のベルト地帯と車社会では隊商の概念は全く存在しない。シルクロードは単なる過去の感傷の世界かも知れないが、砂漠で生きる知恵は継承できるものは継承しないと自然の反撃に合うかも知れない。例えばトルファン地方の500km?のカレーズ(天山山脈の雪融け水を引き込む地下の人工隧道)のような給水システムは大切にして欲しいと思う。

 昔は生活廃棄物を全て自然に還元したが、今では自然還元出来ないビニールの包装や生活廃棄物が増加し、それらを回収するシステムが完全に出来上がっていないためごみが目立つ。田舎でも然りである。農民や遊牧民がアパートに住むことによる心のスラム化の懸念やごみ問題など、近代化には日本がかつて経験しなお解決し得ない同様の問題が山積していると思う。

                                       続く

               2003年10月7日 記