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9.素晴らしい風景・風俗
 新疆ウイグル自治区に来なければ中国の広さは分からないと言う。その面積は日本の約4倍、タクラマカン砂漠だけでも日本とほぼ同一面積である。今回の旅行では素晴らしい風景を数多く観た。

 天山山脈の中腹にある標高1,980mの「天池」は天候が素晴らしく、山と湖と樹木がバランスした良い風景だった。パミール高原の標高3,600mの「カラクリ湖」も晴天に恵まれラッキーだった。7,719mのコングール山をバックにした湖も素晴らしかったが途中の厳しい「山岳風景」にも感動した。

 「南疆鉄道」での天山山脈越えは標高3,000mの山岳鉄道で期待以上の雄大な雪景色を経験した。ハイライトの風紋の「タクラマカン砂漠」も堪能した。

 バスからの600kmの流砂砂漠も異様な体験であったが、飛行機から見たタクラマカン砂漠も凄い。砂漠は決して単調でなく、茶色、紅色、黒色、白色およびその濃淡が複雑に入り混じり、形状も平坦なところあり山ありで、規則的な繰り返し部分と不規則な部分がこれまた入り混じり豊かな表現である。そして到底人間が生存出来ないと思われる砂漠の中でも、生活している小さなオアシスが上空から覗えた。そこでは農地が半分砂に埋まっているように見えた。

 そのほか「ポプラ並木の農村風景」「綿花の収穫風景」「バザールの雑踏」なども15日間の行程中何度も観光出来て満足した。
 
 これらの景色は語彙の少ない形容詞では表せないが、写真の撮影はまあまあうまく出来たと思う。「遺跡」も全て周囲の景観と一体であり、日本の神社のように人工物を避けて撮影する苦労は少なかった。

 これらの広大な風景の中で狭い知識ながらも、シルクロード時代を連想することも出来た。

 アジアでは、東アジアには中国文明、南アジアではインド文明、そして西アジアではイラン文明がアジアの3大文明として大きく花開いた。しかしもしこれらの3大文明がそれぞれ単独のものであったら、これらの歴史は遥かにレベルの低いもので終わってしまったのではなかろうか。
 すなわち、遊牧民とオアシス民がこれらの文明を相互に結んだからこそ3大文明は大きく発展したのである。その意味では歴史に残る大帝王以上の役割を遊牧民やオアシス民は果たしたと思う。もし遊牧民とオアシス民が存在しなければ、日本の歴史と芸術は遥かに寂しいものに終わっていただろう。

 出発前の9月15日に、テレビでNHKスペシャル「文明の道、シルクロードの謎・隊商の民ソグド」を視聴した。ソグド族が生活条件の厳しさ故に生き残る手段として、隊商民族として世界にネットワークを造り上げ、ソグド族として繁栄を極めかつ滅亡した歴史がシルクロードを象徴していると思う。7月のウズベキスタン旅行のサマルカンドは、滅亡したソグド人の国家ソグディアナであった。今回のタクラマカン砂漠はソグド族の苦難の長い長い通勤路である。

 そしてシルクロードは遥か昔にその役割を終え、近代化へ向かって邁進している。

                                       続く

                   2003年10月7日 記