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3.ニヤのホテル
 ニヤで唯一外国人が泊まるホテルに泊まった。西域南道沿いの今回の旅行では一番小さな町である。

 窓のカーテンは半分落ちている。ライトのブラケットは壁から半分ぶら下っている。備え付けのタオルは雑巾のように汚れている。指摘し始めたら限が無い。シャワーも浴びずに停電に備えて枕元に懐中電灯を備えて眠った。ホテルも気を利かせてローソクを置いていた。

 この街で一番高級だったホテルはSARS騒ぎで客が来なくなり倒産したので泊まったホテルは2番目のホテルである。経営は苦しいのであろう。だけどそれだけではない。
 設備をメンテナンスするとの概念がここにはない。ホテルの従業員は当然地元の人であり、貧しい自分の家の設備が常識である。大都市や海外に行ったこともなく彼らの感覚で対応している。彼らから見ればこのホテルは天国なのであろう。部屋には小奇麗なベッドがありテレビもある。洗面所やトイレも何時でもコック一つで水が流せる。なによりも個人の空間もある。だからここまでサービスすれば旅人も満足すると思っているのかも知れない。

 洗面所やシャワーなどの設備はハイテクではないが、部品の製作には結構細かい寸法精度と品質の高い素材が必要である。また壁に打ち付ける釘も抜けないように非常に複雑な構造にする必要がある。タイルや床の防水も職人的な細かい手順が要求されるものである。日本などではこれらは常識であるが、こちらではそこまでの精度や工夫は普及していない。ウルムチや西安の大都会のホテルですら洗面所の天井から水漏れはあった。

 近代的な大都市でこのホテルに泊まったら不快であろうが、周辺の状況も合わせるとそれほど違和感もなく眠りについた。食事も美味しかった。このホテルに泊まったことは一つの武勇伝になる人が居るかも知れないが、ツアー同行者によれば中国辺境の旅行ではこのホテルは素晴らしい部類だと言う。

 話は変わるが、ナイフ職人の町エンギサルで旅行中の果物の皮むき用に小さなナイフを買ったが、使う前からケースとの嵌めあい部分が壊れてしまった。
 自動車も定期的に点検整備するのではなく故障すればそのとき直すのが一般的らしい。カシュガルからカラクリ湖への山岳道路の途中で、我々のツアーと同じ会社の同じ形式のバスが故障し復旧不可能となったため、代わりのバスを数時間かけて呼ぶ羽目になっていた。そのツアーは強脚で歩いた人以外はカラクリ湖の素晴らしい景色を見れなかった筈である。
 
                      続く
                                             

                     2003年10月5日 記