trm007001.gif
シルクロードのトップへ
c40b1160.gif c40b1161.gif
2.怠け者のウイグル人?
関連写真へ
 カシュガルの旧市街で特に強く感じたが、ウイグルの老人がただすることも無くぶらぶらしているか道端に座り込んで長時間話し込んでいた。老人がスローライフを楽しんでいるならそれはそれで良いが、同じ傾向は若者にもある。イスラムの特徴だと発言する人もいたがそれほど単純ではないと思う。

 もともとウイグルは蒙古草原に興った遊牧民族である。漢、唐の時代に農耕を教わり大多数が農耕民族に転化した器用な民族である。興っては滅んだ他の民族のように個性と制覇欲が強い民族ではなかったのかも知れない。或いは強大な国に囲まれて生き延びるためにそのようにならざるを得なかったのだろうか。現在では大多数が農村で綿花や小麦、砂糖きびなどを栽培している。
 広大な畑を少人数で作業している様子や、ロバ車が倒れるほどに多くの荷物を積んでバザールに通う姿を見れば勤勉な民族と思える。問題はカシュガルなどの市街に住む人達である。

 新疆の問題は民族問題だと言うことを聞いたことがある。日本外務省の海外安全ホームページにも「ウイグル自治区では、ウイグル族を主体とする少数民族の一部が幾つかの地下組織を結成し、同自治区全域を領土とするイスラム国家の建設を目的に民族独立運動を行ってると言われている」とか「ウイグル族と漢族とのささいな喧嘩が周囲を巻き込んで騒乱状態へ発展」の記事がある。

 民族問題と言ってもウイグル族と漢族では全く意味合いが異なる。ウイグル族は自分たちの独自の生活様式をいかに守るかが課題であり、漢族はウイグル族を漢文化の中にいかに融合させるかが課題である。融和のために相当気を使った政策がなされていると思うが、両者は両立しない面もある。タクラマカン砂漠には世界で5番目の大油田があるし、イスラム急進派が進出したら中国国家の大問題である。

 新疆においても都市部は急速に発展の最中である。旧市街は区画を定めて一気呵成にブルドーザで更地化されアパート群に変わりつつある。撤去予定の住宅には赤ペンキで「拆」のマークが記されている。
 ウイグル族は昔の遊牧から農耕への転換は問題なかったかも知れないが、都市生活は馴染めないのかも知れない。今の住宅を壊されアパート生活になるとさらに馴染めない。今の住宅は雑然とした感もあるが人々の触れ合いは多いと思う。それがアパートになると日本でも経験し未だ解決しえない心のスラム化が発生するかも知れない。これは単なる感傷だろうか。
 経済の流通の中枢は漢族が握っている。中国全体のネットワークも漢族が圧倒的に上である。ウイグル族は漢族に比べて貧困層になる可能性がある。今回の旅行の優秀な現地スルーガイドも漢族である。

 7月に旅行したウズベキスタンはソビエト崩壊後ウズベク族としての国を造り始めている。民族にはチムールと言う大英雄もいる。チムールの銅像の前で結婚記念写真を撮っていた。
 比べてウイグル族は中国の中では少数民族扱いされ漢文化に馴染まざるを得ない状況になっている。旅行中ウイグル民族の英雄とかウイグルの神話を聞いた験しがない。唯一英雄としてケリヤでウイグルのお爺さんが銅像になっていた。彼は毛沢東が好きでたまらず数千kmをロバ車で北京まで毛沢東に会いに行ったと説明された。

 このような民族問題もからんで特に都市部に一見怠け者に見えるウイグル層が多くなったのではなかろうか。仕事の選択が希望に叶えないことがあるかも知れない。観光資源としての民族文化は彼らの本望ではないだろう。これはたった15日間の旅行中の仮説でそれほど根拠はない。このような微妙なことは現地では質問できない。   

                               続く
                             
                               平成15年10月5日 記