テレビ番組
視聴評論
NHKスペシャル 新シルクロード
放映日 2005/9/12
執筆日 2005/9/12
第7集 「青海・天空を行く」 を視聴して
(本稿は、別途開設しているブログ “「新シルクロード」雑感” より転記したものです)
新シルクロード第7集:「青海 天空を行く」を本日BShiにて視聴した。
この青蔵高原ルートは(も)行ったことがないのでテレビの画面を見た印象だけであるが、標高3200mの青海湖はあのパミール高原のカラクリ湖と似ている。しかしカラクリ湖の周囲は7000m級の山であったが青海湖の周囲は大草原になっている。ただし草原と言ってもモンゴルのどこまでも続くなだらかな草原とは感じが違う。周囲はチベット族でチベット仏教を信仰しているとの説明だが、ブータンの洗練されたチベット仏教とは違うように見えた。自然条件はブータンより青蔵高原の方が厳しいのであろう。道中の砂漠も所謂ゴビタンでありタクラマカン砂漠の大流砂砂漠とは違うようだ。従って画面からの印象では私はこのような土地は経験していない。
テレビ番組で松平アナはしきりに世界で始めてテレビカメラがこの地域に入ったなどと辺境性を強調していた。さらにこのとんでもなく辺鄙な地域でも歴史があり人々が住んでいることに驚きを持って伝えているようだ。
そうなのであろうか。広大な荒地に忽然と工業都市ゴルムドが現れ、エネルギーとチベット地区を統治するための軍事の拠点になっているとのナレーションがあるにはあったが、画面の感じではそこは片田舎の感じである。
しかし地図で見ると西寧からゴルムドには鉄道が以前から通じている。
そして現在ゴルムドからチベット自治区のラサまで世界最高高度の鉄道建設が既に終盤工事に入っているとの情報がインターネット上でたくさんある。この鉄道は5000m級の高い地点を長区間走ることによる低酸素の問題と比較的緩い永久凍土の上を走るなどの難しい技術的課題の解決方法、鉄道敷設による自然保護区の環境問題、それと鉄道開通によるラサ地区の急速過ぎるインフラ整備など、世界的に見ても大変興味ある大土木工事である。
テレビ番組ではこの地方の現在でも行われている遺跡の盗掘が紹介されていたが、遺跡の盗掘すら防げない状況で大土木工事による環境破壊が果たして防げるのだろうかと懸念する。
このようにゴルムドは話題性のある町にも関わらす、テレビ番組では単なる辺境の町としてしか紹介されていないのは不思議だ。シルクロードのテーマにふさわしくないのだろうか。25年前のシルクロードでは当時の最新鋭の南疆鉄道が紹介されていたが、新シルクロードでは人為的なこだわりがあるのではないか。
テレビカメラが世界で始めてこの地区に入ったとの説明も情緒的に過ぎないだろうか。西寧からゴルムド経由のアルチン山脈を越えて敦煌に至るルートは私の所に送られてくる旅行会社(西遊旅行)のパンフレットにも掲載されている(テレビ番組のルートはアルチン山脈を越えてミーランに至っていたが)。 旅行会社のツアーは勿論真夏だけであるが、このツアーが催行されていれば、特に探検にも高所登山にも経験のない定年を過ぎた男女が参加している筈である。しかも今の時代当然ビデオカメラを持参している。NHKが世界最初ではないと思うが? 了