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テレビ番組
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NHKスペシャル 新シルクロード
放映日 2005/5/09
執筆日 2005/5/18
第5集 「ラピスラズリの輝き」 を視聴して(その2)
(本稿は、別途開設しているブログ “「新シルクロード」雑感” より転記したものです)
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スバシ故城とヨーヨー・マ教

新シルクロード第5集の「ラピスラズリの輝き」でもオールドシルクロードの「天山南路」でもクチャ近郊の「スバシ故城」を空中から撮影した映像がテレビ画面に放映されていた。
画面からも伺えるが、「スバシ故城」の現地を実際に訪れてみるとそこは実に広大な遺跡である。一般に観光客が訪れるのはその中心部の仏塔近辺だけであろうが、故城全体を遠くから見るとその広大さに感心する。

京都の「清水寺」や「大徳寺」も広大であるがスバシ故城は桁が全く違う。同じくトルファンの「高昌故城」や「交河故城」も広大である。
残念なことに現在ではこれらの故城は崩れた煉瓦の山が部分的に残っているだけであるが、昔は多くの建造物群が並び、到る所に壁画や彫刻が彫られていたであろうと思うとその雄大な文明に改めて感心する。

「15世紀以降に海上交易が盛んになると、シルクロードの重要性が薄れてこれらの都市が消えた」との説明は一面的と思う。もし戦乱(内乱)による火災などで都市が破壊されていなければ、現在のクチャやトルファンの中心部は依然としてこの遺跡がある部分を中心に受け継がれて来たかも知れないし、遺跡は廃墟にはなっていなかったと思う。都市が消えた理由の一つに地下水脈の変化が関係しているのかも知れない。
これらの遺跡は動乱による破壊に加え、偶像を嫌うイスラム教への改宗も相俟って美しい仏教芸術は破壊されてしまった。さらに盗掘と厳しい風土による劣化も破壊に輪をかけた。

話題は変わるが、私の5月8日付けのブログで「再々度ヨーヨー・マについて」と題して一文を投稿したところ予想外の反響があった。曰く「何という低レベルの音楽センスを持っているのか。あなたにはヨーヨー・マについて述べる資格は全くない」との趣旨だったと記憶する。(消去した)

私のブログを罵倒する根拠は書かれていないので推測するしかないが、この人にとってはテレビ番組のヨーヨー・マの解説や、CDのジャケットに書かれているヨーヨー・マの音楽のキャッチフレーズと同じ調子でヨーヨー・マを論評しないと納得しないらしい。少しでも別の切り口から論評する人は「異教徒」に見えるのか。

私はヨーヨー・マの音楽が悪いと言っているのではない。ただ文化の東西交流はそれほど単純でない場合があることを、音楽を例にして言おうとしただけなのだが‥‥‥。
序に言えば、私はバッハの無伴奏バイオリンソナタとパルティータの全曲CDを5枚ほどと、無伴奏チェロソナタのCDを3枚ほど持っているが、これらに比べてもヨーヨー・マは素晴らしい演奏家だと思うし、テレビ画面からもその闊達な人柄は伺える。

ヨーヨー・マの音楽に心酔することは自由だが、世間に流布されているキャッチフレーズ通りに心酔し他の感想を単純に否定するならば、それは異教徒を拒絶する精神状態に似た狂信的な「ヨーヨー・マ教」でなかろうか。「新シルクロード」の番組のように、音楽が歴史や文化に深く関連している場合は多少の知性と議論も必要と思う。皮肉を言えば最近では狂信的な「ヨン様教」もあるらしい。
何れにしても今後はヨーヨー・マを賛歌しているブログへのトラックバックは慎重にしよう。了
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