テレビ番組
視聴評論
NHKスペシャル 新シルクロード
放映日 2005/4/11
執筆日 2005/4/12
第4集 「西域のモナリザ」 を視聴して(その1)
(本稿は、別途開設しているブログ “「新シルクロード」雑感” より転記したものです)
4月11日にBshiにて新シルクロード第4集「西域のモナリザ」を視聴した。
タクラマカン砂漠の南を走る西域南道のオアシス都市ホータンが舞台であり、近郊のダンダンウイリク遺跡とホータンから出土する玉が主要テーマであった。
1昨年にホータンを訪れたことがあるがダンダンウイリク遺跡は勿論行ってない。但し現地ガイドが「ダンダンウイリクで新しく発掘が行われている」との説明を聞いた記憶がある。
参加したツアーではホータン郊外のマリクワト故城とその横を流れる白玉川を訪問した。そこで強烈な印象(悪い印象)を持った。
途上国の名所旧跡では一般に執拗な土産物売りが居るが、マリクワト故城はその執拗さでは群を抜いていた。農民たちが私たちのバスを遠くから見つけると、仕事を中断し我先にバスに向かってロバ車を走らせて来る。その顔つきは余裕がなく無我夢中である。
バスの止まる場所にはロバ車が群がり、自分のロバ車に観光客を乗せようと前後左右から農民が観光客の身体を強く引っ張り混乱で転倒したロバ車もあった。ここには順番とか並ぶとかの概念はない。
大柄なガイドが身体を張って何とか我々を数台のロバ車に乗せたが、ロバ車が遺跡へ行く途上そして遺跡見物中も近隣の子供たちが小さな玉を「買ってくれ、買ってくれ」と寄ってくる。100回「要らない」と言っても20 0回「買ってくれ」と言う。相手が子供ながらにもその執拗さには閉口した。
ツアーメンバーの感想として「この近所が特に貧しいため」とか「ここは子供たちの遊び場となっており、遊び半分に売っている」との好意的な意見もあったがそれだけではないと思う。
テレビの画面ではホータン玉を売り買いする場面が数回映し出されていたが、玉の原石1個で1億円とか、数個で7億円の数字が飛び出している。これは宝くじ以上のとんでも無い金額である。この10年間で100倍に相場が上がったとも言う。
良質な玉を見つけた人は忽ち億万長者になる。その周囲の人たちも射幸心に煽られる。そのような雰囲気が子供たちにも伝わっているのではないか。
例えばダイヤモンドの産地とか石油の産地では、それを掘り当てて権力と富を築いた人とそれが出来なかった人との間で貧富の差が激しくなる。人間の性として同じ現象がここホータンでも現れているのではなかろうか。
ダンダンウイリク遺跡で壁画の盗掘が最近あったとの画面が映されていたが、一攫千金を夢見て玉を探す人と、壁画を盗掘する人の心理状態は共通するものがあると思う。
話は変わるが天然資源がなく農業が基本の自給自足経済のブータンが「幸福の国」と称されるのとは対照的だ。
本日の番組では、この地が10世紀にイスラム化する前の素晴らしい仏教遺物である「西域のモナリザ」と、玉に群がる人を対照的に面白く鑑賞した。しかし仮に私がマリクワト故城の執拗な物売りを経験していなかったならば、この番組の感想は異なっていただろう。了