silkroad007001.jpg
テレビ番組
視聴評論
全体目次へ
NHKスペシャル 新シルクロード
放映日 
執筆日 2005/1/30
楼蘭のミイラ(その2)
(本稿は、別途開設しているブログ “「新シルクロード」雑感” より転記したものです)
silkroad007005.jpg silkroad007002.jpg
前回の番組へ
次回の番組へ
「楼蘭はタクラマカン砂漠の中にある乾燥地帯で、そのため4000年前のミイラが状態良く保存されている」と言われている。他では見られない防腐処理もしてあったとナレーションは言う。
かたや「太古はこの近辺は豊かな緑の地帯であり、そこは胡楊の森が茂り、広大な小麦畑だった」との意のナレーションもある。そして画面では、草木が茂る湖上を若い女性がボートで往来し、小麦畑に囲まれてまどろむ幻想的なイメージシーンがあった。

この二つの説明は矛盾してないだろうか? 
湿地帯ならば埋葬された遺体は直ぐに傷んでしまいミイラにはならないと思うし、逆に作物の実らない乾燥地帯であったならば小麦の種子がミイラの副葬品として発見されることもなく、埋葬地で幾重にも重なった胡楊の葉がミイラと共に発掘されることもない筈である。

妥協点を考えてみた。楼蘭の周囲は4000年前も、やはり砂漠であった。しかし、タリム川(ナレーションでは孔雀川と呼んでいた)沿いと、その終着湖のロブノール湖の近辺にある楼蘭はオアシスの中にあり、そこには胡楊の森や小麦畑があり、家畜となる獣も棲んでいた。ただし、そのオアシスは現在に見られる機械化施工によって潅漑された広大な緑のベルト地帯のオアシスではなく、比較的小さな点のオアシスだった。

オアシスの外は広大な砂漠地帯であり、そして基本的には楼蘭は乾燥地帯であった。
そして発見された小河墓遺跡は、オアシスの外の砂漠地帯の小高い丘に建設された。林立する胡楊の墓標は近くのオアシスから切り出して運んだ。

これでも矛盾が残る。墓の周辺に深く埋まっている幾重もの胡楊の葉は何故そこにあるのか? この胡楊の葉は自然に堆積したものか、またはミイラが過度の乾燥を防ぐためにわざわざ人工的に敷き詰めたものなのか? 前者ならば、墓の周囲には胡楊の林が残り、なおかつ乾燥した墓地だったと言うことになる。それにしても小高い丘の墓地に何故胡楊の葉が積み重なっているのか?

この仮説を解明するためには墓以外の周囲を掘ってみれば簡単に分かると思う。墓以外の場所でも地中深く幾重にも堆積した胡楊の葉が存在するのであろうか?
NHKの「新シルクロード」の番組でこれを検証してもらう事は無理と思うが。

上記は高々数千年前の話であり、時代がさらに遡り数億年前になるとこの地帯は本当に大密林地帯であったのだろう。タクラマカン砂漠は世界で5番目の埋蔵量を有する世界有数の油田地帯だと1昨年の旅行時に説明されたことがある。了
silkroad007003.jpg silkroad007004.jpg
前回の
番組へ
次回の
番組へ