随想:幼少期へのタイムスリップ
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2.「のがわ」の源流を訪ねて(2)
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沼地が蘇った姿見の池
謎解きは後にしてさらに川を遡ろう。国分寺市に近付くにつれ、あるいは国分寺市内を進むにつれ水量はどんどん少なく川幅は小さくなり遊歩道も消えた。そしてJR中央線と交差する辺りで川が分からなくなってしまった。

消える筈がないと線路を超えうろうろすると小さな池があり小川が流れていた。案内表示板では「恋ガ窪」とか「姿見の池」とかある。平安時代の故事に因んだ名前だそうだ。さらに説明を読むとだんだん分かって来た。

この辺り元は武蔵野の広大な湿地帯であり湧き水がたくさんあった。しかし昭和40年代から20年間で全て宅地化され道路は舗装された。

そのため大量の雨が降ると水は地下に吸収される暇なく、下流の川を氾濫させ災害が続発する事態になった。逆に少雨の時は地中に水が蓄えられないため河川が枯渇してしまう。地下水位も低下した。

数千万年かけて隆起と侵食を繰り返しバランスしてきた自然を、人間はたった20年間で破壊してしまったのである。洪水や枯渇の仕返しを受けて当然である。

対策として行政は付近の住民の協力を得て雨水が地下に吸い込まれる装置を一面に設置した。その甲斐あって再び湧き水が復活し小規模ながら沼も蘇ったが、これはほんの小規模なものである。元々はこの数百倍、数千倍はあったであろう。

ただし付近は既に一面住宅地で、今からそれをすべて沼地に戻す訳には行かない。
(続く)