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ムサック・ミレット台地の土漠を疾走する4輪駆動車
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写真−53
ムサック・ミレット台地の土漠を疾走する4輪駆動車
2007.11.14
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砂漠の中の道‥‥
砂漠の強行軍は、全て4輪駆動車だが、走行した砂漠の経路を観察すると、大きく3つに分かれる。

1)土漠地帯‥‥細かい砂が広く平面状に広がっており、4輪駆動車は好きな場所を自由に全速力で走行可能である。ただし土埃がもの凄く舞い上がるので、窓を完全に閉めないと大変である。前を走行する車がある場合は、その土埃を激しく被り、視界が全く遮られることもある。土漠地帯は粒子が細かい 「土」 の個所もあれば、多少粒子が大きい 「砂」 の個所もある。

2)礫漠地帯‥‥細かい石が一面に広がった場所である。しかも石は尖っているので、タイヤがパンクする可能性が高い。運転手は別の車が走行して少しでも跡がなだらかになった個所を選びながら慎重に運転していた。この悪条件が地平線から地平線まで続くこともある。車は速度が出せない上に激しく揺れるので、条件は一番悪く運転手も観光客も疲れる。

3)砂丘地帯‥‥所謂 「流砂砂漠」 である。文字通り 「砂山」 が連続し、勾配のきついアップダウンが続くので、4輪駆動車の性能の限界が試される。性能の悪い車は勾配の緩い個所を選ばないと走れない。タイヤの空気圧は低くしておく。

 
5日間にわたる砂漠走破は、地平線から地平線に続く広大な道無き道の 「土漠地帯」 「礫漠地帯」 「砂丘地帯」 を勝手気儘に走り、毎日の目的地に達しているかのように錯覚した。しかし実際には、走行路の選定には理屈があることが、走行した経路の衛星写真を仔細に観察すると判明する。土木屋の眼力である。

先ず、山間部(台地)の高い部分は車が登れず、仮に登っても地形の凹凸、および砂礫や岩石が多くて車は走れない。

次ぎに、礫漠地帯は、走行可能ではあるが大変な困難が伴うので、可能な限り避けたい。ただし、ムサック・ミレット台地を横断する時や、ワディ・マンタンドーシュの岩絵に行く時は、礫漠地帯を走らざるを得なかった。礫漠地帯は山脈や台地、あるいはワジ(涸れ河)の近くに拡がっていることが多いようだ。

理想的なのは土漠地帯を選んで走ることである。埃さえ我慢すれば短時間で走行距離を稼げる。ワンカサ砂丘やムーズック砂丘では、主として土漠地帯を選んで走行した。土漠地帯は山脈や台地の麓に広く拡がっている。ただし、麓と言っても数10kmの幅があり、その中に入れば周囲は地平線の中で、山脈や台地は見えない。なお、アカクス山脈内の走行経路は、奇岩群の中ではあるが、走行個所は土漠であった。上の写真は土漠地帯の走行である。

そして、観光客にとって一番楽しく、景色も素晴らしい砂丘地帯の走行は、土漠地帯から離れてキャンプ設営地点に向かう時や、観光用にジェットコースター走行を楽しむ場合に限られる。代表的にはウバリ砂丘の走行がこれに該当した。これがないと観光客は満足しないが、短時間での長距離移動は稼げない。砂丘地帯の面積は大変広く、ワンカサ砂丘、ムーズック砂丘やウバリ砂丘の大部分を占めており、走行したのは広大な大砂丘の極く一部分である。

砂漠の中の舗装道路(例えばセブハからガダメスに向かう幹線国道)は、上記とは逆に、礫漠混じりの土漠地帯を選んで建設されていることが、衛星写真から伺える。礫漠地帯は地盤もしっかりしている上に埃も少ない。較べて、礫が全く無い土漠地帯は地盤が弱く、風が吹けば埃も多く好ましくない。ましてや、砂丘地帯に舗装道路を建設すると、メンテナンス含めて大変なことになる。裸の礫漠地帯の走行は大変だが、舗装道路の場合、礫漠地帯は理想的な条件となる。


日本の場合、利害・打算と政治力で路線は決まるが、砂漠地帯では自然条件で路線が決まる。
このような目で旅行した人は居るだろうか?