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随想:フィットネスクラブに通う
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§3.古代人はどれだけ歩いていたか
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私が平坦な道を10km歩くと560kcal消費すること、そして560kcalはファミリーレストランのヘルシーコーナーの「サラダうどん」 1杯で摂取出来ることは別項で述べた。これが議論の出発点である。

人類の祖先は霊長類としての7000万年間、そして人類(猿人)としての600万年間の長い歴史の中で、20万年前に南アフリカ共和国に「現生人類」が出現した。そして約15万年前からこの「現生人類」が世界各地に移動拡大を始めた。この「原生人類」の移動拡大は、それまで各地に住居していたネアンデルタール人や北京原人、ジャワ原人などの旧人・原人を駆逐・絶滅しながらオーストラリア、ヨーロッパ、アジア、南米大陸と全世界に勢力範囲を拡大していった。
即ち、現在の地球上の全ての人種の祖先は、20万年前にアフリカ南部に誕生した「原生人類」となるので、この「原生人類」の女性は象徴的な総称として「ミトコンドリア・イヴ」と命名された。オーストラリアのアポロジニも南米のインデアンもカナダのエスキモーも欧米の白人も、中国人も、勿論日本人もアイヌも、祖先は全て「ミトコンドリア・イヴ」である。
世界各地に移動した「原生人類」はその地の気候・風土に適合するように体型や肌の色が変化していったが、同じミトコンドリアDNAを持っている。

これは膨大なサンプルの遺伝子(DNA)の分析により得られた学説であり、人類の「グレートジャーニー」と呼ばれる。勿論この大移動は一人が行ったものではない。「原生人類」の出発点のアフリカから南米のチリ先端までは 5万キロあるが、1年に1km移動しても 5万年では 5万キロになる。気の遠くなるような長い移動である。そして有史以前と以降の長い年月の複雑な移動拡大の中で、同じ先祖(ミトコンドリア・イヴ)を持つ人類同士が戦いを繰り返し、勢力圏を変化しながら現在に至った。日本には 5万年前頃に人類が移動してきたと言われている。
(BS朝日:BBC地球伝説、斉藤成也著:DNAから見た日本人、沼尻由紀子訳:遺伝子で探る人類史他)

このような経緯の中で、日本人の DNAは「原生人類」が出現して 20万年、日本に到達した後でも 5万年の長い時間をかけて形成されてきた。
即ち、長い石器時代あるいは縄文時代の人々の「運動量」と「摂取量」および「食物の種類」にバランスするように日本人の DNAは形成されてきたと考えられる。 

 
従って 10km歩くと 560kcal消費すること、そしてそれを補うためには1杯の「サラダうどん」で良いことは DNAが決めた事であり、勝手に変更することは出来ない。
例えば1km歩いて10倍の 560kcalを消費するとか、一杯の「サラダうどん」で1/10の56kcalに摂取を抑えることは不可能である。

古代人も1杯の「サラダうどん」に相当するカロリーを摂取するために 10km歩いた。1日2食として家族の食料確保も考えると、この数倍は1日に歩いたであろう。さらに狩猟の成果は毎日ある訳ではなく、成果が全くない日が何日も続くかと思えば、マンモスを倒して腹一杯食べる日もあった。充分に食べた日々の脂肪は皮下や内臓に蓄えられ、その後何日も続く空腹期間に備えられたので、このような生活環境に適応するように DNAは形成されてきた。

健康に良いとされる蕎麦や粟、稗などの雑穀物や大豆、胡麻、イモなどは、狩猟を行っていた石器時代や、焼畑農耕を行っていた縄文時代の主要食糧であり、DNAはこれらの食糧に合うように変化してきた。稲作が日本に伝わったのはせいぜい 5000年前頃の縄文中期か後期であり、これ以降の短い期間では日本人の DNAは稲作に完全には適応していないのではないか。まして最近食べ始めた「大量の牛肉」や「大量の油で揚げた食事」に適するように日本人の DNAは変化してない筈である。
勿論、パソコン中心のオフィスワークにも DNAは未だ対応していないので、パソコンを長時間使用するとストレスが溜まる。

このように考えると、日本人の体脂肪の異常な増加は 「DNAに反する生活習慣」によるものである事が理解出来る。当然 DNAは変更出来ないので、体脂肪を簡単に減少させるための魔法はあり得ない。

解決策はただ一つ、「古代人のように身体を動かすこと、そして DNAが慣れ親しんだ量の食物を摂取すること」しかない。

以上は、ウォーキングマシンの上で長時間歩いている間に思い巡らしたものであり、内容に責任は持てないが、私はこの理論に満足している。   
 
§4.へ
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