旧城壁(タリパチ門 )
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写真−23
旧城壁(タリパチ門 )
ブハラ
2003年7月22日
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タリパチ門の不思議な写真 ‥‥
「タリパチ門とその城壁の前をラクダの隊商が往来し周囲は広漠とした砂漠」を描写した素晴らしい写真を見つけた。

これは8月13日に鑑賞した東京国立博物館で開催中の「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」の売店で発売中の「NHKシルクロード特集」の全巻DVDの解説書の中の一枚である。 アジア最深部の叙情的な風景の代表として見開きページ全体を飾っていた。20年ほど前にNHKが番組取材の際に撮影したと言う。(高いので購入しなかった)

しかし先日訪れたタリパチ門の風景はこれとは全く異なっていた。道路は舗装され、タリパチ門の横の広い広場は農民バザールとして賑わっていた。そして門の近辺はバザールのための駐車場である。ラクダは勿論のこと砂漠など周囲には無い。

たった20年前は、この地にラクダの隊商が往来し周囲が砂漠だったのだろうか? この写真が事実なら、それはあまりにも激しい変化であり大発見である。

それを確かめるべく翌日に愛宕山にある「NHK放送博物館」を訪ねた。先ず4階の図書・資料ライブラリーで、1984年3月5日に放映された「NHK特集シルクロード第2部、草原の王都:サマルカンド、ブハラ」を検索して50分の番組を懐かしく視聴した。

確かに、ブハラの最初の箇所で例の写真と同じく、砂漠の隊商がタリパチ門の前を通るシーンがあった。これは大発見である。しかし?

念のため、同じく資料ライブラリーで書籍「NHKシルクロード、ローマへの道、第10巻アジア最深部」を読んで見た。これで謎は全て解けた。

このシーンは、砂漠の中をラクダの隊商が通った往時の雰囲気を再現した演出だったのである。ラクダのソフォーズで飼われていた約200頭のラクダの中、撮影に耐えるラクダ15頭を選び、荷物を積み隊列を組んで撮影したとの記事があった。今で言う「やらせ」である。大発見にはならず些かがっかりした。

NHKとしては視聴者のイメージを膨らませるための親切心に富んだ演出だったのであろう。私も今回のウズベキスタン旅行は、アジアの最深部、しかも14世紀には世界の中心地だったサマルカンドと言うことでかなり先入観を持って訪問した。20年前に視聴した「 NHK特集シルクロード、絲綢の道・ローマへの道」による感化も多かったと思う。

旅行は平面軸も時間軸も「点」でしかあり得ない。広大な地域を数世紀に亘り旅行することは不可能である。そのために各種の歴史書や解説書があり、頭の中で平面軸や時間軸を拡げている。今回の旅行は歴史を辿る気持ちで世界遺産を巡り多くの写真を撮ったが、ウズベキスタンの現在にも非常に興味を持った。19世紀の帝政ロシアの南下に続くソビエト化、ならびにソビエト崩壊による新国家建設と変動の真っ只中である。政治体制の激しい変動と矛盾、経済成長の激しい変動と矛盾を旅行中垣間見た。

しかしこれらを論ずるには知識が不足であり、また軽々しい発言は差し障りがある事項も多い。旅行者にとって永遠の課題である。

                                   

                                      平成15年8月15日 追記