サウス・ピーク(その2)
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写真−55
2008.4.16
am7:55
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高い山では圧力鍋は爆発する?‥‥
インターネットのサイト上では様々な「理科の先生」により、高い山では気圧が低くなるため水の沸騰点が下がるので、100℃以上に上げる必要があれば圧力鍋を使えば良いとの記述が、計算式や図表含めて細かく書かかれていた。

この記述の前半には異論はない。私がキナバル山の頂上での水の沸騰点を計算してみたら、86.9℃であった。しかし、後半の 「圧力鍋を使えばよい」 の記述は工学的な落とし穴があるかも知れない。

我が家の圧力鍋は説明書によると、温度が120℃を超えると、蒸気圧により 「調圧弁」 が持ち上がり、ピーピーと音を立てながら蒸気が逃げるように設計されている。

120℃の時の鍋内部の蒸気圧は、1989 hPa(ヘクトパスカル)である。また、鍋外部の地上大気圧は1013 hPaなので、圧力鍋の内外圧力差は、976hPa(=1989−1013)となる。
従って、圧力鍋の強度は、976 hPa の圧力差に耐えるよう設計されている筈である。

ところが、標高 4095m のキナバル山頂では大気圧は 622hPa に下がる。この時、圧力鍋の内外圧力差は、1367hPs(=1989−622)となり、地上における圧力差の1.4倍となる。即ち、設計値の1.4倍の荷重オーバーとなる。

1.4倍の荷重オーバーでも実際に圧力鍋が爆発しないのは、鍋の強度計算は「ある安全率」を持って設計されているからであろうが、キナバル山頂では安全率が、1/1.4 に減少し、危険側の状態になっていることに留意しなければならない。キナバル山よりも高い山なら、さらに安全率は減少する。

「理科の先生」には気圧などの自己の専門知識だけではなく、さらに広く配慮した考察・記述をお願いしたい。

また、女性料理研究家が書いた圧力鍋料理の本を見ると、120℃の時圧力は1.2倍に上がると書いてあった(正しくは1.96倍)。出版するからには正しく書いて欲しい。