2.深い山中の幹線道路
 ブータン国内を移動する時は小型のバスで移動したが、道中は全て深い山の中、例えて言うならば秩父山脈の奥深いところのような感じである。複雑な地形に決して逆らわずにくねくねと道路がつけられている。道路の幅員は小型車がやっとすれ違いが出来る程度で道路の中央部が1車線分だけ舗装されており両端は土のままである。無理して山肌を大きく削り取っていないし、ガードレールや交通標識がないので遠く目には道路があることが殆ど分からない。自然に優しい道路だ。松枯れ病により荒廃した森林もない。
 交通信号も首都ティンプーにただ1箇所あるだけであり、しかもそこは警官による手信号である。
 
 これが日本ならば、幅員を広げるために山肌を大きく削り、路線を直線に近づけるためにトンネルや橋梁を架け、安全のために中央分離帯やガードレールや交通標識、信号をたくさん設置するだろう。そして若者は交通事故に怯えながらギリギリの高速度で飛ばす。しかし急いで行った先の観光地は自然破壊が進み、品の無い土産物屋が並んでいる。
 
 ブータンの幹線道路の状況は日本のセンスから見れば大きく遅れているが、旅行中1件の交通事故も目撃しなかった。運転手も何時犬や牛が飛び出してきても大丈夫な程度にしかスピードを出さない。またスピードを出せない。車同士のすれ違いや遅い車の追い越しも互いに譲り合っている。但し橋梁工学の専門的な目で見れば、ODA(政府開発援助)による本格的な橋梁を除いて、田舎道の橋梁は心細い構造であり車両の重量化が進めば落橋の恐れがあるものもあった。
 
 ブータンでは訪れた観光地全てが寒村の中のひっそりとした例えば厳粛な僧院などである。物売りや乞食は全く居ない。土産物屋もない。
 
 曲がりくねった山道を整備して、3時間かかるところを1時間で行けるようにすれば便利になると言う考えもあろうが、そうはなって欲しくない気持ちになる。
 
 移動時間はかかるが、明らかに日本よりブータンの方が心豊かに旅行出来る。   続く
 
 
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