武田流鎌倉派
流 鏑 馬
武田流鎌倉派流鏑馬神事の概説
日本古式弓馬術協会理事長
武田流鎌倉派正統師範
金 子 家 堅 先生
 流鏑馬の起源は、第29代欽明天皇の御世、国の内外(外は新羅・高麗・百済)が戦乱のため、
心を痛められた天皇は、これを平定するに先立ち、豊前の国、宇佐の地(宇佐八幡宮の鎮座地)
に神功皇后・応神天皇を祀られ、神前で、天下平定・五穀成就を祈られて、馬上で三つの矢を射
られたのが流鏑馬(矢馳馬)の起源であるという。後、第59代宇多天皇の勅命により源能有公が
弓馬の礼を制定され、以来、源家を経て、武田・小笠原に分かれ相伝された。
 室町時代には、武田氏は甲州、芸州、若州の国主になり、弓馬の礼は芸州の武田氏が司って
いた。
 徳川時代には、両家(小笠原は備前家)とも肥後細川家に寄頼し、武田氏は細川家の縁類に
より保護され、その家臣竹原惟成(これしげ)に伝授され、以後竹原家によ
って今日に至った。
 鎌倉派は昭和9年10月、細川公の允許により熊本において第14代竹原惟路の高弟で代見格
旧細川藩士・井上平太の系統を、その直弟・熊本出身の金子有鄰が継承し、主に東京・鎌倉の
地においてこの道統の興隆に一大足跡を残したが、現在は、その直弟子等を中心に鎌倉派として
正統が継承されている。
流鏑馬神事式次第
 奉行は武田菱の定紋のある綾檜笠(あやひがさ)、紫地に金糸の揚羽向蝶(あげむかいちょう)を
散らした鎧直垂(よろいしたたれ)に太刀を帯び、二十四本の征矢(そや)を差した箙(えびら)を負い、重藤(しげとう)の弓を持ち、行縢(むかばき)を付け射沓(いぐつ)をはくのである。
 射手(いて)は赤地、又は、青地に各々家紋を金糸で表した鎧直垂(中袖)に射小手(いこて)を指し、綾檜笠(鬼笠)を戴き、右腰には矢三本(他の一本は弓にそえて持つ)、前差及び尻鞘をかけた太刀を帯び行縢に射沓をはく。的目付、弊方、矢取、旗手、扇方、陣太鼓の諸役は直垂(大袖)に後三年形の烏帽子(えぼし)を頭にし太刀を帯び鼻高沓をはき、出陣に備える。
 的目付(まとめつけ)、弊方(へいかた)、矢取(やとり)、旗手(はたて)、扇方(おおぎかた)、陣太鼓の諸役は、直垂(大袖)に後三年形の烏帽子(えぼし)を頭にし太刀を帯び、鼻高沓(はなたかぐつ)をはき、出陣に備える。
一、出 陣
 奉行の打つ「寄せの太鼓」を合図に、射手、諸役、一同広場に集合する。
二、鏑矢奉献の儀
 奉行、射手、諸役は行列により拝殿へ進み向拝に一列横隊に跪座(きざ)する。
奉行は、天長地久に用いる鏑矢を奉献し、天下泰平五穀豊穣の願文を奏上、鏑矢を拝受し、
一同退出する。
(かぶらやほうけんのぎ)
三、天長地久の式
 広場に戻り、射手(いて)、諸役は天長地久の式の形に並ぶと、奉行は「五行の乗法(ごぎょうのじょうほう)」を行う。即ち乗馬し左廻り三回右廻り二回、中央の位置で馬を止め正面に目礼して、鏑矢を弓につがえて天と地に対し満月に引き国家の天壌無窮、五穀豊穣を祈念する。これより馬場本に向かって行進を開始するのである。
 行進中は「序の太鼓」を打ちながら馬場本に至り、諸役は馬場左側を通り各部署に就く。射手は乗馬のまま馬場本に残り、奉行は下馬し櫓に組んだ記録所にあがり、諸役が部署についたのを確かめ『破(は)の太鼓」を打つ馬場本・末の扇方は、扇で合図し準備が完了したことを知らせる。これより射手は順番に「素馳(すばせ)」を開始する。
四、騎  射
(一)式 の 的
 的は一尺八寸四方で、檜板を網代(あじろ)にあみ、その上に白紙を張り青黄赤白黒の五色
で丸的を表し、的の後には四季の花を添える。式の的の射射に移り,射手は一番手、二番手、
三番手の三組に分かれて、それぞれ三回奉射する。即ち重藤の弓に矢をつがえ一の的を射る。
更に腰に差した矢を抜き二の的を射ぬき、更に三の的へと全速力でかけ抜け、各々三回九本
の矢を射る。
(二)競 射

 的は、土器二枚を合わせ中に五色の切紙を入れた三寸の小的で、命中すると土器は砕け、
中の五色は吹雪の如く飛び散る。尚、競射の出場資格は式の的を七本以上命中した者が、
その資格を有する。 
 競射が終ると奉行は記録所において「止めの太鼓」を打ち鳴らし、諸役は各々手持具を持
ち、奉行、射手は乗馬のまま広場に帰り凱旋の式を行う。
五、凱旋の式
 競射の最多的中者は、式の的を持ち、奉行前に進みて跪座する。奉行は扇を開き骨間より
的を検分する。扇を戻し、太刀の鯉口を切った時、太鼓は「・・・」三打する。奉行の「エイ・エイ・エイ」の声に続いて射手諸役一同「オー」と唱和する。これを三回繰返し勝鬨を揚げる。(これは首実検の意を表現している。)

                                                 以 上
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