・十六五、みよしや
出雲の阿国像から四条通の北側を八坂神社に向かって歩く事にする。和装小物の井沢屋の隣に甘納豆の十六五がある。色々な甘納豆がある中でお勧めは「大多福」だ。大多福豆をじっくり時間をかけて煮込んであり、豆自体の風味を壊さずに丁度良い甘さに仕上がっている。
この十六五の隣に昼間通ると木戸の閉まった店がある。何もないのかと思ってしまうが、夕方通ると行列が出来ている不思議な店だ。ここがみたらしだんごの「みよしや」である。
十六五(とうろくご)
各種の甘納豆の他五色豆、豆板、おたいこなどの和菓子を扱っている。このうち、甘納豆と五色豆は新門前にある工場で作っている自家製のもの。屋号は甘納豆のひとつ斗六から来ている。
みよしや
夕方五時から店を開けるため、散歩の帰りに寄るのに丁度良い。店と言っても奥行はなく、客は歩道に並ぶ事になる。炭火でだんごを焼いており、香ばしいかおりがあたりに漂う。一本80円できなこ付きときなこ無しが選べる。持ち帰りが基本だがこの場で食べると言えば、容器に入れてくれる。閉店は売り切れた時点。
・辻利と都路里
みよしやの前の横断歩道で一旦四条通の南へ渡り、再び東を目指す。眼病に効くというめやみ地蔵を過ぎて100mほど歩くと日本茶を売る店がある。祇園辻利だ。この店の右側に階段があり、二階、三階が和風の喫茶店「都路里」になっている。
辻利
一階で日本茶を売っている店が辻利で、二階、三階で茶寮を開いているのが都路里。どちらも同じ経営。辻利は萬延元年(1860年)の創業というから幕末の頃に開いた店になる。主として宇治茶を扱う。
辻利と都路里の位置
都路里
辻利のお茶を使ったパフェが若い女性を中心に人気を呼び、休日になると店の前に長い行列が出来る。写真は都路里パフェ。あっさりとした甘味のパフェでクリームと抹茶が調和していて美味。特選パフェになるとこれに抹茶カステラなどが付く。休日は大変混むが、午前中なら比較的空いていて並ばずに入れる。朝からパフェが食べられればの話だが。
特選都路里パフェ 1100円
都路里パフェ 950円
玉露 900円 など
・鍵善良房
都路里からさらに東へ歩くと、再び花見小路の一力亭に戻ってくる。今度は一力亭の手前の横断歩道を北へ渡り、西へと折り返す。花見小路から少し歩くと赤い暖簾の店がある。和菓子の鍵善良房である。
鍵善良房
享保年間(1716−1736)創業の和菓子の老舗。平成10年に現在の新しい店舗に代わっている。玄関を入ってすぐのカウンターで和菓子を売っていて、店の奥の喫茶店ではくずきりやぜんざいが食べられる。
くずきり
きしめん状になった吉野産のくずきりを甘い蜜に浸けて食べる。「しろみつ」と「くろみつ」があり、くろみつは黒砂糖の風味が濃厚、しろみつはあっさりしていて食べやすい。どちらが良いかは好みに依る。くずきりの独特の食感とあいまって、さすがに洗練された味である。祇園を散歩する途中のおやつとして丁度良い。
くずきり 800円
鍵善の干菓子の詰め合わせ。何ともカラフルで、思わず買ってしまった。菊、松茸、紅葉、柿など季節に合わせたセットになっていて、それぞれの造形が面白い。お茶請けに最適。
950円(税別)より
干菓子
・いづう
鍵善良房からさらに西へ歩くと、右側に入る道がある。これが切り通しと呼ばれる道で、四条から白川まで祇園の町中を通る道である。このあたりは雑居ビルが立ち並ぶ地域だが、その中で外せない店がある。
いづう
天明元年(1781年)の創業の寿司屋。特に鯖寿司でその名を知られる。鯖寿司というとどこか生臭いイメージがあるが、ここの寿司はそういった嫌味が全くなく、別次元の美味しさを備えている。かなり高価だが、食べてみて損はない。
鯖姿寿司 1本持ち帰り 4200円
お召し上がり 2100円
・下里家住宅
「いづう」からさらに北へ向かうと道幅の狭くなった石畳の道へと続く。このまままっすぐ行くと巽橋に出るのだが、ここでは一旦左へ曲がる事にする。お茶屋と雑居ビルが混在した場所で観光客もあまり来ない所だが、酒屋の隣に見ておきたい建物がある。
下里家住宅
1895年(明治28年)に建てられたもので、お茶屋の最も古い形式を残すものとして平成5年に京都市の有形文化財に登録された。
ところで、ここは「するがや祇園下里」という1818年(文政元年)創業の和菓子の老舗でもある。ホームページによると創業当初から現在地で営業してきたとあり、以前はこの近くで営業していたのだが、後にこのお茶屋を買い取って店にしたという事だろうか。お茶屋が和菓子の店に変わるというのもちょっと面白いと思う。
祇園豆平糖(まめへいとう) 1箱800円より