夏休みの絵日記のことで、おかあさんとやりあって、キレた。ぼくは、かいじゅうになった。ガオーっと、火をふいた。ひとりぼっちになったんだ…。
絵日記のことでお母さんに叱られて、「ピキーン」という音と共に「怪獣」になった少年。
いえ、勿論本当の怪獣になったわけではなく、叱られていじけちゃった彼の心が「かいじゅうになった」という表現で表されているのですが、仲良しの友達と「つきあいきんし」にされて寂しいところへ母親に叱られ、夏休みも終わり…。はあ…
なんとなく覚えがあるような男の子の心の移り変わりに懐かしさが込み上げてきます。
鈴木びんこさんが描くキャラクターや情景がとても爽やかで美しく、友達のヒデくんと夏休み最後の夕焼け空を見上げながら「武勇伝」を自慢し合うシーンは僕のお気に入りです。
元気な子供達の痛快なやり取りに、夏の終わりの物悲しさをちょこっと漂わせた楽しい絵本ですよ。
『ぼくはほんとはかいじゅうなんだ』
文:後藤竜二 絵:鈴木びんこ ●童心社
クラスでひとりぼっちの「わたし」あだち みずほは、学校にまよいこんできたぼろぼろの犬を「ボロ」とよんで世話を始めます。
「わたしは、げたばこのすみで、はいいろのかたまりをみつけました。大きないぬです。ながいけなみは、ぼろぼろのモップのようです。わたしは、いぬのとなりにこしをおろしました。なつかしいにおいがしました…。」
みずほはいじめられっこの少女でした。毎日が息苦しく、先生にも両親にも胸の内を打ち明けられず、涙にくれもがいていました。そんな少女の心のよりどころが、学校に住みついた野良犬の「ボロ」でした。
この絵本は、「みずほ」と「ボロ」の心の交流を描いた作品であると同時に、「命」についても考えさせられる物語です。特筆すべきは作画の長 新太さんの見事な描写です。「みずほ」の心の再生と、「ボロ」の切なくなるような眼差し。だからこそ胸に刺さる悲しい別れ。
しかし、「みずほ」は「ボロ」によって救われ、「ボロ」は「みずほ」に生きる希望を見出せたのではないでしょうか。
悲しくも清々しい心の再生を描いた感動作です。ハンカチを忘れずに。
『ボロ』
いそみゆき・作 長 新太・絵 ●ポプラ社
ふようどは、林の落ち葉の下で、ほっかりゆっくり育った、できたての土のこと。だから、ふようどのふよこちゃんはとってもいい匂い。今日も元気にお山をお散歩だ!
いやあ、絵本には「クマの○○」とか、「ウサギの○○」とかはよくお目にかかりますよね。でもこの絵本、「ふようどの ふよこちゃん」ですよ!?腐葉土っすよ!?腐葉土はその名のとおり葉が腐敗して出来た土ですが、僕は小学校の頃授業で菊を育てるにあたり、学年全体で山へ天然の腐葉土を集めに行った事を思い出しました。今の子供達は「腐葉土」って知らないのでは?
はじめて彼女(ふよこちゃん)を見た時はびっくりしましたね。でもふよこちゃんは本当に可愛いくて、腐葉土の性質がとてもわかりやすく面白く描かれています。
作者の飯野和好さんの故郷埼玉県秩父の山里を舞台に、自然と人間との関わりにさりげなく問題提起されている絵本です。
ほのぼのと楽しく、でも考えさせられる作品ですよ。
『ふようどの ふよこちゃん』
飯野 和好 作・絵 ●理論社
チリとチリリの小さな姉妹が森の中を自転車で走ります。チリチリリ。森の喫茶店へ、パン屋さんへ、ホテルへ…。そして、それぞれの場所で素敵なものが用意されています。
えー、この絵本は僕も勿論好きなのですが、僕のカミサンの(超)お気に入りなのです。
どい かやさんの描く姉妹「チリ」と「チリリ」が可愛らしく、また喫茶店やホテルの中の机や椅子、小物がとても色鮮やかで「本当にあったらいいなあ」と思ってしまいます。
チリとチリリのお話もシリーズ化されていて、やはり自転車に乗って海の中を探検して、すてきな宝物を見つけるお話(◎「チリとチリリ うみのおはなし」)や、自転車で町の中を走り、お買い物をしたり色々な人達と出会うお話(◎「チリとチリリ まちのおはなし」)があり、どの絵本も綺麗な絵で目を楽しませてくれます。絵本のページをそのまま飾ってインテリアにしたくなりますよ。
どい かやさんの絵本作品には、仲良しの兄弟(姉妹)やお友達のお話が多くて、どのお話もほのぼのと暖かい気持ちになります。またそのうち別の作品も紹介させていただきますね。
『チリとチリリ』
作・絵/どい かや ●アリス館
どんどこ どんどこ どんどこ どんどこ ももんちゃんがいそいでいます。くまさんに通せんぼされても、転んで頭をぶつけても、それでもももんちゃんはいそいでいます。そんなに急いでどこへ行くのでしょう?
最強です。何が最強って、主人公ももんちゃんの可愛さが最強です。最初この絵本を手に取ったときは、ずいぶんシンプルな絵でいかにも小さい子向きだなあ、と思っていたのですが、文章にリズム感があり歌を歌いながらページをめくっていくような、そんな楽しい絵本でした。
作者のとよた かずひこさんにも二人のお子さんがいらっしゃるそうです。深い愛情を持って子ども達と接してらっしゃるんだなあ、と感じました。
この「ももんちゃん」のお話はシリーズ化されています。全てのお話でももんちゃんの魅力爆発で、さてどのお話をご紹介しようかと迷いましたが、どんどこ走ったももんちゃんがたどりついたその場所が、なんとも微笑ましく暖かい気持ちになったので、シリーズを代表してこの「どんどこ ももんちゃん」をおすすめします。
他の「ももんちゃんシリーズ」も可愛くて癒されますよ〜!
『どんどこ ももんちゃん』
とよた かずひこ/さく・え ●童心社
歌いながら森へでかけたぐりとぐら。大きなたまごを発見し
「あさから ばんまで たべても、まだ のこるぐらいの おおきい かすてら」
を焼くことにしました。甘いにおいにつられて、森の動物たちが次々と集まってきます。
今更僕がおすすめするような絵本ではありませんよねえ。日本だけでなく世界各国で愛され続けるふたごの野ネズミ「ぐり」と「ぐら」のお話です。
ぐり ぐら ぐり ぐら
このふたごのネズミ「ぐり」と「ぐら」の素晴らしいところは、たまごが大きすぎて運べないなら、この場で作ろう。たまごのカラが残ったら、自動車を作って乗って帰ろう…と、次々と楽しいことを思いつき、軽やかに実行してみせることですね。そのひらめきと行動力はすごいです。
そして、なんといってもあの美味しそうな黄色いカステラ…。見てるだけでヨダレがでてきます。…あ〜カステラが食べたくなってきた…
楽しくほのぼのと心に残る、末永く読み続けたい名作です。
ぐり ぐら ぐり ぐら
『ぐりとぐら』
さく/なかがわ えりこ え/おおむら ゆりこ ●福音館書店
『となりのせきの ますだくん』
作・絵/武田美穂 ●ポプラ社
とっても天気の良いある日、台所から“かぶさん”が空へ飛び出しました。
思わず「!?」となってしまうような奇想天外なお話がこの「かぶさんとんだ」です。
空に飛び出したかぶさんと、似たような形のあれこれが、いっしょになって空を飛んでいくのですが、それがみんなとても可愛くてユーモラスです。しかし、僕がこの絵本を大好きになったわけは、作者の五味太郎さんが著書の中で「書いて気持ち良かった」と語ったお話のラスト。
「どこまでも どこまでも とんでった」
その後です。これこそ「五味絵本」の真骨頂ともいうべき展開ではないでしょうか。僕もはじめて読んだときは、「うわっ、そうきたか!」とうなってしまいました。
有名な絵本なので、読んだ事があって知ってる人も多いと思いますが、知らない人のためにあえてここではその「一言」は書きません。
五味太郎さんのデザインの素晴らしさ、そして優しさとユーモアは、読んだ人の心をつかんで離しませんよ!
『かぶさんとんだ』
さく・え/五味太郎 ●福音館書店
とんだり かけたり ころんだり… アコちゃんのまいにちはたのしいことがいっぱい!元気な女の子アコちゃんが主人公の絵本、シリーズ2冊をおすすめします。
児童文学界の第一人者・角野栄子さんと、僕も大好きなイラストレーターであり絵本作家の黒井健さんのコンビが贈る心温まる「アコちゃん短編集」で、もとはお話絵本雑誌「おひさま」の中で連載していた大ヒット作品です。家の子供達も大好きですが、幼児向け絵本なのに大人が読んでもすごく面白いと感じる名作なんです。「あそびましょ」「まいにちまいにち」共に、アコちゃんの5つのお話が楽しめます。
アコちゃんは普通の女の子。お話も、アコちゃんがどこかへ冒険に行ったり、とんでもない事件が起こったりするわけではありません。でも、アコちゃんはすごいんです。いろんなお友達がいるんです。
ぬいぐるみの「くまちゃん」や「トラトラちゃん」は当たり前。洗濯機や冷蔵庫、台所のお化けたち、サンタクロースも、空のおひさまだってお友達です。すげえ!
「おひさま」連載中のアコちゃんシリーズも面白かったので是非絵本化してほしいんですけど、現在はこの2冊だけみたいですねえ。
子供のまっすぐな気持ちが、すごくまっすぐに描かれているから楽しいんでしょうね。ほのぼのと、思わず笑顔がこぼれる絵本ですよ。
『おひさまアコちゃん あそびましょ』
『おひさまアコちゃん まいにちまいにち』
作/角野栄子 絵/黒井健 ●小学館
僕が小さい頃、家でも犬を飼ってたんですよ。名前を「ハリー」と言いました。そう、この絵本の主人公「ハリー」からもらった名前です。これは僕が幼少のころから大好きだった絵本です。(因みに、僕が生まれる前に飼っていた犬も、やっぱり「ハリー」だったそうです)
「黒いブチのある白い犬」のハリーはお風呂が大嫌い。裏庭におふろブラシを隠して外で遊んでいるうちに「白いブチのある黒い犬」に大変身!遊び疲れてお家に帰っても、家族の誰もハリーと気付いてくれません。さて…
そー言えば、僕の家のハリーは洗い方が大雑把だったなあ…。暑い日にホースで水をぶっかけていただけだったような…。まあ、本人(?)は喜んでいたけど。
発売されてから40年以上も人々に愛される絵本。ハリーを取り巻く家族の暖かさ、優しさがいっぱいの心温まるお話です。
『どろんこハリー』
ぶん/ジーン・ジオン え/マーガレット・ブロイ・グレーアム ●福音館書店
画像をクリックすると、紀伊国屋書店BOOK WEBから絵本を購入することができます。
興味のある方は是非御利用ください。※右のamazonサーチも御利用いただけますよ。
| このコーナーではコダマがセレクトした絵本をご紹介します。まったくの独断と好み、その時の気分で選んだものであることと、あくまでも専門家ではない率直な感想ということでご理解いただけたらと思います。そしてもし、機会があったら是非お読みになってその感想などをお聞かせください。今後も不定期に追加していきますが、皆さんのおすすめの1冊がありましたら是非お知らせください。 |
『おまえうまそうだな』
『おれはティラノサウルスだ』
『きみはほんとうにステキだね』
『あなたをずっとずっとあいしてる』
作・絵/宮西達也 ●ポプラ社
「I Will…」/「どろんこハリー」/「おひさま あこちゃん」/「かぶさんとんだ」/「となりのせきの ますだくん」/「ぐりとぐら」/「どんどこももんちゃん」/「チリとチリリ」/「おまえうまそうだな」「おれはティラノサウルスだ」「きみはほんとうにステキだね」「あなたをずっとずっとあいしてる」/「ふようどの ふよこちゃん」/「ボロ」/「寿限無」/「ぼくにもそのあいをください」/「ふゆのよるのおくりもの」/「羊男のクリスマス」/「千の風になって」/「コブタの気持ちもわかってよ」/「コバンザメのぼうけん」/
「ぼくはほんとはかいじゅうなんだ」
『寿限無』
齋藤 孝・文 工藤 ノリコ・絵 ●ほるぷ出版
あるところに、それは長い名前の男の子がおりました。その子の名前は、寿限無寿限無、五劫のすりきれ…。
落語でも有名な「寿限無」。この言葉遊びが子供達の間で大流行したのを皆さん知っていますか?家の子供達も全部暗唱できます。きっかけはNHK教育の「にほんごであそぼう」での企画。僕はこの番組を初めて見た時、「わ〜これは良い番組だなあ」と思いました。
「寿限無……」は人の名前である事は皆さん知ってますよね。ではなぜこんな長い名前になったのか?長屋の熊吾郎の所に男の子が生まれ、和尚さんに名前をつけてもらうんですが、「死なない保障付きのようなステキな名前を」との注文に、和尚さん次から次へと縁起の良い名前を言っていく。せっかちな熊五郎はどれも気に入ってしまい全部繋げて一つの名前にしてしまったんですねえ。それでこの熊五郎夫婦、絶対名前を省略したりしない。このバカ正直さ、なんとも面白いですよねえ。是非声に出して読んでいただきたいです。
で、この絵本表紙からインパクトあります。工藤ノリコさんが描く「寿限無ワールド」が本当に面白くて可愛くて、見たらあなたもこの子のほっぺとおしりをプニプニしたくなりますよ。
え?「この子」って誰かって?寿限無寿限無五劫のすりきれ、かい…………
な、長い名前の子ですよっ!

『ぼくにもそのあいをください』
作・絵 宮西達也 ●ポプラ社
お待ちかねの宮西達也さん作「ティラノサウルス シリーズ」の最新作です。第5弾ですね。
この世の中は力があるものが勝ち。力の強いものが1番なんだ。そう信じていたティラノサウルスがいました。月日が経ち、すっかり年をとったティラノサウルスは、ある日トリケラトプスの子どもに出会って…。
本当に大切な「強さ」ってなんでしょう?本作のティラノサウルスは「力の強さ」こそが大切だと考えていました。しかし、トリケラトプスの子供達の純粋な優しさに触れ、彼はその「本当の事」に気付くのです。今回のお話は、過去のティラノサウルスシリーズの集大成とも言えると思います。ラストのトリケラトプスのお父さんの言葉を、是非声に出して読んでみませんか?なかなか恥ずかしくて口に出せないその尊い言葉を…。きっと読み手も聞き手も、皆胸が熱くなることと思います。
で、この絵本のカバーをよく見ると、過去のティラノサウルスシリーズのキャラクターが総出演してるんですねえ。お話のラストを含めて考えると、もしかして今回で完結なのでしょうか!?
愛すべき名キャラクター・ティラノサウルス。彼の活躍を今後も期待してるのですが…。
『ふゆのよるのおくりもの』
芭蕉みどり 作・絵 ●ポプラ社
きょう、ティモシーとサラはもみの木をかって帰りました。家できれいに飾りつけをして、クッキーを焼いて、さあ、これからおでかけです。
クリスマスの飾りつけや街の賑わいなど、細部にわたり色鮮やかに描かれたイラストに目を奪われます。そしてなんと言っても可愛らしい子ねずみのティモシーとサラに心が癒されますよ。
ティモシーとサラは、クリスマスイブの日、おじいちゃん・おばあちゃんのお家へクッキーを持って出かけます。でもサンタさんが来る日なのに、誰もいなかったらプレゼントなしでサンタさんが帰っちゃう…。心配したティモシーとサラはお母さんのアイディアでクッキーとミルク・お手紙を置いて行きました。
このお話は、子供の目線・大人の目線で捉え方が違うかも知れません。でも、子供の純粋な心、そしてその心を暖かく包みこむ親の愛情(お父さんの行動ですね!)に心が暖かくなります。
クリスマスの時期にピッタリの絵本です。
『羊男のクリスマス』
作/村上春樹 絵/佐々木マキ ●講談社
クリスマスを前に呪いにかかってしまった羊男。
この「呪い」を解くために彼は冒険に行く(と言うか、行くハメになる)のですが、そこで彼を待ちうけていたのはなんとも個性的で怪しいキャラ達だったのでした。さて、彼は自分にかかった「呪い」を解くことができるのでしょうか?
村上春樹さんの作品が好きな僕は、登場するキャラクターとの「再会」に胸が躍りました。何より、大変な目にあっているにもかかわらず、イマイチ切迫したような緊張感がない主人公「羊男」。思わず「フッ」と笑ってしまうような展開と、ラストの羊男の偽り無い気持ちにこみ上げてくるものがありました。
佐々木マキさんのイラストも、お話のある意味このハチャメチャな世界観に実に違和感無くマッチしていて、とても楽しめましたよ。
ドーナツ片手に読みたい絵本です。キャラクターはみんな魅力的でしたが、僕の中では「なんでもなし」が絶品でしたね。
『千の風になって』
新井 満/文 佐竹 美保/絵 ●理論社
大切な人を亡くしたとき、悲しみをいやしてくれるのは…。今世界中の悲しみをいやしてくれる「死と再生の詩」はいったい誰が書いたのでしょう? 愛の永遠を高らかにうたいあげる究極のラブ・ストーリーです。
『千の風になって』 という「詩」、僕はこの絵本で以前から知っていました。多くの方は写真詩集の方で御覧になっているようですね。
本編はタイトルも無く、『千の風になって』という題名は詩の中の言葉から引用したそうです。欧米では既にかなり有名な詩らしいのですが、いつ誰が書いたのか全くわかっていないのだとか。
2006年の紅白歌合戦で、テノール歌手の秋川雅史さんがこの曲を熱唱してましたが、思わず鳥肌が立ちましたねー。とても心に響く詩で、一言一言に深い「愛」を感じます。
この絵本では、アメリカ先住民のナバホの人々の苦難の歴史を背景にした物語が展開します。ストーリーは作者の新井満さんの「想像」ですが、佐竹美保さんのイラストと相まって、感動的な作品に仕上がっています。(佐竹美保さんのイラストは本当に美しい!)
自分達を取り巻く風・星・花・草にもう一度目を向けてみませんか?そんな事を考えさせられる名作です。
自分の気持ちをうまく話せない。はやく考えるのはとくいじゃない。パパやママや先生には、わからないことってないんだろうか?ちょっぴり不器用なコブタくんの思いを描いた、大人も胸がきゅんとなる物語。
深く考えさせられる絵本です。なにも言わず抱きしめたくなるような主人公、大人の無責任な感情によって気持ちを吐き出すことが出来ないでいるコブタくん。「おなかがいたい」と言ってうずくまる姿に目頭が熱くなります。
主人公のコブタくんの気持ちは誰しも共感できる部分があると思います。「コブタの気持ちもわかってよ」と言うのは、「僕の・私の気持ちもわかってよ」という切なる願いが込められているように感じられます。
人として、親として、思いやりの気持ちを思い出させてくれる、そんな感動の名作です。
全編痛々しくもあるコブタくんの心の叫びですが、最後の最後、あの一コマで少しだけ救われた気がしましたね。
シンプルなイラストと読みやすい文章で、コブタくんの気持ちがストレートに伝わってきます。
この絵本、子を持つ親や学校の先生とかに読んでもらいたいなあ、なんて思います。
『コブタの気持ちもわかってよ』
作:小泉 吉宏 ●ベネッセ
なかよしのクジラに「もっとせけんを知らなくちゃ」といわれたコバンザメは、“せけん”探しの旅に出ます。たくさんの海の仲間と出会いながら、コバンザメは…。
仲良しのクジラちゃんと離れて、ほんの子供のコバンザメは様々な海の生き物と出会い、世界が広がっていきます。巨匠・灰谷健次郎さんの優しくわかりやすい文章に、僕も大好きなイラストレーター・村上康成さんが描く色鮮やかで個性的な海の生き物が画面の所狭しと息づいて、見ているだけで楽しくなる絵本です。
しかしこの絵本は、コバンザメのただの冒険譚ではありません。色々な色、色々な形、たくさんの個性のなかで生きていかなくてはならない、それはどこか人間の世界にも通じるところがあります。
ただ、「世間」と聞くとどうしても「荒波」や「厳しさ」といったことを連想してしまいがちですが、この絵本のなかで「世間」は「友達」と位置づけられています。
そう考えると、自然と生きる勇気も湧いて来ませんか?もしかしてクジラちゃんはコバンザメにそんな事を教えたかったのかな…。
読んでいるうちに海の生き物の生態なんかもわかっちゃう、優しく楽しい絵本ですよ。
『コバンザメのぼうけん』
作:灰谷 健次郎 絵:村上 康成 ●童心社