TMDU分院
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日々気温が上昇している春から夏にかけての時期。 
  草原の様な広い敷地、背の高い草木はなく、膝くらいまでの青々とした草が風に揺られ打ち寄せる波を思わせる。
  かつてそこは飛行場であった。滑走路の跡を辿って行くと、茶褐色に退廃した三階建ての建物が見えてくる。窓枠はさび付き、ガラスは割れて、廃墟に興味のない人でもここが使われていない事を瞬間的に理解する。
  侵入防止策をとられた一階の窓は鉄板で塞がれている。その鉄板をこじ開けようとした跡が生々しく残るが、途中で諦めたのか隅は歪んだままになっている。
  外階段で2階に上がり、中を覗くと、重厚な造りの木製の扉が目に入る。建物が使用されなくなって数年経つ割には、色褪せる事無く凛とした姿を保っている。
  鳥の巣と化したこの分院は、中に入ると様々な鳥と遭遇することになる。それだけ鳥がいるので糞の跡がとてつもない。この糞を避けて通ることはまずできない。
  建物中央に構える階段は、踊り場まで上がるとそこから左右に分かれスイッチバックする。踊り場に設けられた窓ガラスから差す光は、剥がれた薄緑の壁の色をより強調させた。
  鉄板で塞がれた1階よりも明るい2階に上がると、鳥たちの鳴き声はより多く耳に入る事になる。そして招かざる客に驚き、目の前を鳥たちが飛び交う。
  建物の扉や壁は、比較的落ち着いた薄い緑とクリーム色を基調としているが、経年効果で薄汚れ不気味な色にさえ見えてくる。その中で一室、明らかに違った造りの部屋に辿り着く。外階段から見えた、アコーディオンタイプの木製の扉だ。
  一室だけ違う造りのこの部屋は、ここの長が使用していた事がわかる。そして、壁に張り付くように高い天井まで届く木製の本棚。窓からの光を受けて、木製品独特のツヤが光る。
  残留物は何一つないが、この建物の造りは独特で、長とその部下達の格差がはっきりしている建物であるといえよう。
それもそのはず、分院になる前は戦争で使われていたというのだから。
  上下関係と、規律を重んじる兵隊さんは、日常のふとした所にもその格差意識を誇示していた。
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