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随 想
3.高 尾 山
平成14年11月6日
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関東平野は大変広い。しかし住んでいる調布市から西に京王線で僅か30分も走ると高尾山口と言う終点があり、そこはすでに住宅地を離れた山中の駅である。

高尾山に登るにはケーブルカーやロープウェイもあるが、駅から標高599mの頂上までは歩いても1時間半程度である。登山路は杉並木や小渓流、滝もあり雰囲気は鬱蒼としており散策に良い場所だ。高い山に登る前日のトレーニングとしても良い。

頂上からはさらに小仏山、影山、陣馬山と続き、このコースは一日コースとなる。

高尾山の頂上手前に薬王院と言う立派なお寺があり、付近に20数個の由緒ある寺社建築物が散在している。この薬王院は真言宗智山派の大本山であり、奈良時代に行基菩薩により開山されたそうだ。山岳仏教と修験道場が一体となって隆盛を極めた歴史を持ち現在でもその雰囲気は伝えられている。

高尾山薬王院は成田山、川崎大師とともに、関東の三大本山として知られている。

その高尾山薬王院では諸願成就として杉苗奉納の習慣がある。信者から納められた杉苗料は、高尾山の自然環境を維持していく費用として森林の植林、伐採などに使われるとのこと。

興味を持ったのは、神社の参道に沿って延々と連なる杉苗奉納者の尊名板の数であ
る。

足早に数えてみた。1,000本の杉苗の奉納者が 約2,100名、2,000本が 約400名、
3,000本が 約240名、以下延々と続き最後は百万本1名となっている。

合計してみたら奉納者総数は約3,000名、奉納された杉苗は約800万本である。しかもこれは平成13年だけの数値である。

800万本で考え込んでしまった。 仮に1人が1日50本の杉苗を植える事が出来ると仮定し、1年の365日欠かさず仕事して、毎日約500人の職人が必要な計算となる。植林の面積も相当なものであろう。信仰とは凄いものである。


この山は普段は静かな山であるが、紅葉の季節は山の下から上まで人通りでごった返す山となる。どの登山ルートも超満員である。

中には足が絡まって転んで骨折や捻挫をする人もいる。この時期の消防庁の救急隊は大変だ。一人が登山路で転んで骨折すると20人位の救急隊員が無線連絡を取りながら担架を持って駆けつける。

「女連れでペチャクチャ喋って足元も見ずに歩けば、木の根に躓くのも当然だ」と隣を歩いている登山者が言っていた。

この遭難者は救急隊が来てからも救急隊員とペチャクチャ喋っていた。厳しい冬山の遭難に比べれば天国であろう。


平成14年11月6日 記


 




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