147.「吉野家牛丼騒動」
 狂牛病騒動によるアメリカ産牛肉の輸入禁止の煽りを受けて、昨年暮れ以来の"吉野家牛丼販売中止"の大騒ぎは凄まじかったですね。


 日本人は一体、そんなに牛丼が好きだったんでしょうか?
牛丼はいつから、日本国民をパニックに陥れる程の"国民食"となっていたのでしょうか?


 それにしてもマスコミによる牛丼販売中止報道の過熱さはちょっと異常でした。
とにかく全国津々浦々、あらゆるマスメディアが早朝から夜遅くまで、"自衛隊のイラク派遣"に負けず劣らずの大報道合戦を繰り広げました


 とに角未明にトイレに起きて、ちょっとテレビのチャンネルを回したら、NHKの男性アナウンサーが、「吉野家の牛肉問題は……」とニュースを読んでいました。


 今回のマスコミの過熱報道は、正直言って、賛否が二分するところでしょう。
言うまでもなく賛成する人は、日頃から安い牛丼(少し悪意ある表現)のお世話になっている人、否定する人は、そもそも吉野家あたりで安い食事を摂らない人。

 
 私には「高いから食べない」という選択肢はあっても、「安いから食べる」という選択肢はないので、会社や自宅の近くにも"吉野家"はありますが、心ならずも食べに寄るのはせいぜい年に5〜6回で、今年は未だ一度も訪れていません。

 
 無名な人が有名になると急に親戚が増えるといいます。
その親戚たるや、おじいちゃんの代からとっくに疎遠になっていて冠婚葬祭の付き合いもない人までもがしゃしゃり出て来て、「親戚だ、親戚だ」と吹聴するからです。

 
 又弱小プロ野球の球団が優勝しそうな形勢になると、急にどこからともなく俄か作りのファンがぞろぞろ出て来て、「自分は数十年来の根っからのファンだと自慢します。

 
 今回の吉野家騒動もそれに似たようなものでしょう。
にわかファンや便乗組で盛り上がった感じが否めません。


 有名なコメンテーターや報道関係者、ジャニーズのタレントたちまでもが、吉野家牛丼販売中止には大きなショックを受けているような発言をしていましたが、「そもそもお前らは吉野家に行ったことがあるのか?
 行ったこともなくて、エラそうなことを言ってはいけません。

 
 マスコミで大騒ぎするほど、一般の人達は吉野家の問題で大騒ぎしていたのでしょうか?
テレビのインタビューなんかでは、「食べられなくなって大変なショックです」とか「エンゲル係数が上がってしまいそうです」とかの煽りコメントばかりを取り上げて放映していましたが、「関心がないよ。牛丼を食べなくても生きていけるからね」とか「わたしは牛丼はあまりたべませんから・・・・」などのそっけないコメントもあったはずです。


 そもそも吉野家騒動ではなくて、アメリカ産牛肉の輸入禁止騒動のはずですが、騒動の中心がいつのまにか"吉野家"の方にすり替わっています。


 勘違いをしていらっしゃる向きもあるかとと思いますが"吉野家"の牛丼は、並盛りで280円という超安値だから、それが懐のさびしい、主に若年層に受け容れられているから売れているのであって、例えばいくらか味をよくしても、500円もすればそう売れるものではありません
 売れないからこそ"吉野家"も超安値に価格を設定しているわけです。


 今回の牛丼騒ぎは、安い牛丼が食べられなくなったということであって、おいしい牛丼が食べられなくなったということではありません。
 おいしい牛丼は、お金さえ出せば、今でもいくらでも食べることができます。


 誤解の無いようにお断わりしておきますが、私は"吉野家"の牛丼を非難しているのではなく、"吉野家"問題に関するマスコミの過熱報道を非難しているのです。

 
 しかし私がいくら"吉野家"を軽んじても、"吉野家"に恩恵を受けている学生やサラリーマンのファンが多いのは事実です。
牛丼の大手4社を合わせて、牛丼を食べる人が1日当たり100万人もいるそうです。

 
 下司の勘ぐりと言われてしまいそうですが、今回の過熱報道による牛丼業界の宣伝効果は数十億、あるいは百億円にも達するかも知れませんね。

 
 "吉野家"も牛丼を販売中止にしたからといって決して会社が潰れるわけでもなさそうだし、むしろその絶大な宣伝効果に牛丼チェーン店業界は案外ウハウハかも知れません。

 
 宣伝効果に関しては、"松屋"、"すき家"、"なか卯"の4大牛丼チェーン店の中では、"吉野家"が1人勝ちです。
 マスコミの過熱報道では、殆ど"吉野家"だけが連呼されていましたから。

 
 牛丼発売最後の日に、新橋の"吉野家"某店で最後の一杯を注文したKさんがインタビューを受けていましたが、すっかり有名人になってしまいました。


 なにしろ多分、コメントを取ろうと今か今かとカメラとマイクの放列が待ち構えている中で、彼は最後の一杯を食べたわけでしょうから。
 本人もさぞ驚いたことでしょう。

 
 間抜けな話しもありました。
牛丼が売られていないと知って暴れた男がいたそうです。
牛丼専門店に牛丼を食べに来て、いきなり「牛丼がない」と言われたら、そりゃー誰でも怒ります。
「てめー、俺をなめとんのか!」と怒り出しても当然です。

 
 あれ程報道されていたにも拘わらず彼は、牛丼が販売中止になっていることを全く知らなかったそうです。
道理で、"オレオレ詐欺"が後を絶たないはずです。
 いくら報道しても"オレオレ詐欺"のことを知らないお年寄りが沢山いて、むざむざと老後の貯えを騙し取られています。


 新聞も読まなきゃテレビのニュース番組も見ない、こういう人は自分の周りにも結構いますからね。
そういう人もスポーツ新聞だけは随分熱心に、むさぼるように読んでいます。

 
 手に赤のボールペンを握りしめて。


今日(2/19)これを書いている最中に、長崎で再び、「牛丼を出せ!」と大暴れした男が捕まりました。


いろいろとひねくれたことを書きましたが、要は"吉野家"が、たかだか280円の牛丼で格好をつけるのがみっともないということです。


 オーストラリア産は草食なので、アメリカ産に比べて味が落ちるからとか、値段が高いから使えないとか、そんな屁理屈をこねている場合じゃありません。
消費者はそんなことにはそれ程こだわってはいないはずです。
この不景気真っ盛りの中で消費者は、安くておいしいものを求めています。
だからこそファンはせっせと"吉野家"へ通ったのです。
 私自身はファンではありませんでしたが。

 
 こういう消費者のためにも、"吉野家"がなんとか工夫して牛丼を供給し続けるのが、企業としての責任を果たすことになると思います。

 
 今回は随分早い時期、既に昨年の暮れに販売中止の動きがありましたが、私には、「先ず販売中止の結論があった」との印象が否めません。


                                               
                                                      平成16年2月20日


<追  記>

 今日NHKテレビのニュースを観ていましたら、"すき家"では、牛肉を豚肉に変えて「豚丼」を売り出したら、それが大売れで、「牛丼」と比べて売り上げがちっとも減っていないそうです。

 これが消費者のことを考える企業努力というものでしょう。
私が上に書いたとおりのことが起こりつつありますね。


 インタビューに出た人も言っていました。
「自分は肉にはこだわっていない」と。
 
 








































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