大勢の若い、それも殆んど未婚女性の前で、自分の恥ずかしい部分を惜しげもなくチン列した体験が、皆さんにはあるでしょうか?
私にはあります。
しかも強制的にそれをやらされたんです。
10年ほど前に私の職場の同僚が、突然七転八倒の苦しみをはじめ、直ぐに救急車で病院へ運ばれてことなきを得たことがありますが、原因は急性の脱腸(ヘルニア)でした。
腸の一部が玉袋の中に下りて来るというアレです。
勿論男性の病気。
もともと病気に関しては臆病な私は、同僚のその苦しみ様を見て少し心配になり、家に帰ってから風呂場で早速私の玉袋を仔細に触診したんですが、、何か違和感があります。
妙なしこりが手に触れるんです。
数日後私は近所の開業医を訪ね、どうも自分には脱腸の兆候があるんではないかと訴えたんですが、とうに70歳を超えていそうな老医師は、私の玉袋を触診しながら、「なんともない、正常だ」と断言します。
その時はホッと一応安心して帰宅したんですが、今度は老医師の年令が気になり始め、老医師の見立てがどうも信用できないと疑い始めてしまいました。
その後も玉袋を触るたびに不安が募るばかりで、思い余って今度は、家から1駅先の大学病院の外科へ診察を受けに行きました。
私の、脱腸ではないかとの切々たる訴えに、医師はおもむろに私の玉袋に触れるや否や、「その様だね」と言い、早く手術した方がいいということで入院日も決められてしまいました。
家に帰り着くなり私は妻に向かって、「やっぱり大学病院の医者は違う。町医者は頼りにならない」と吹聴したものです。
病気だと告げられて、落ち込むどころか得意になるというのも、変な話しですが。
数日後私は入院したんですが、入院初日の診察で、若い担当医師が、私の玉袋を触診しながら盛んに首をひねります。
次の日もまた、同じように首をひねるんです。
目の前で医師が深刻な顔をして首をひねるのを見せつけられたら、患者は不安になってしまいます。
私はすっかり落ち込み、そしてあるひとつの思い込みが私を支配してしまいました。
私には本当のところ、脱腸ではない、もっと重大な病気が潜んでいいるに違いない、そしてそれは"癌"なのだ!
それから手術前のいろいろな検査が行なわれたんですが、私にはそれらの検査がすべて、"癌"の検査に思えて仕方がありませんでした。
いよいよ手術の日が来て、手術直前の診察で、今度は中年のベテラン医師が最後の触診をしたんですが、この医師も触診しながら、やはり首をひねります。
そして私は手術室へと運ばれて行きました。
手術は麻酔で行なわれました。
麻酔医の「1、2、3と数えたら眠りに入り……」との声を聞きながら、私は既に深い眠りに落ちていきました。
再び眠りから醒めた時には、私は既に自分のベッドの上にいました。
その時の私の感覚では、ずいぶん長い時間、眠っていたような気がしました。
目を開けると、枕元で妻がニコニコしながら、私の顔を覗き込んでました。
私は手術後のすっかり面やつれした顔(?)で、ポツリと妻に漏らしました。
「俺も大手術に耐えて無事に生還したけど、手術には、どれくらいの時間がかかったのかな……?」
その時妻の口から信じられないような一言がもたらされました。
「15分!」
それも手術室に入ってから出てくるまでの時間だというのですから、手術には10分もかかっていないんでしょう。
間もなく顔を出した執刀医の、「ヘルニアはあるにはあったんですが……」というなんとも煮え切らない説明を聞きながら、私は「要するに、ヘルニアじゃなかったということ?」と、自問自答していました。
私が最初に外来で診察を受けた医師の、診たて違いだったということでしょう。
あの老開業医の診たてを信じず、こともあろうに大学病院の医師を、私の希望する病名へと誘導した私にも大半の責任があるので、誤診とまでは言いませんが。
お陰さまで、「やっぱり大学病院の医者は違う。町医者は頼りにならない」、「俺はひょっとして癌では?」、「俺も大手術に耐えて無事生還したけど、手術には、どれくらいの時間がかかったのかな……?」
この3つのトホホ発言は、今でもことあるごとに引き合いに出されて、妻から思いっきりバカにされています。
入院生活が続き、話しも佳境に入りますが、ここでは書き切れませんので、続きは明日、次のページに掲載します。
平成15年8月27日
127.「入院中の恥晒しな体験・1」