宇宙事業団6
宇宙飛行士・募集! 高級優遇、経験不問
人類初の火星着陸という大偉業を達成し、日本が誇る世界的なヒーローとなった あなたの面影も、今やリビングに飾られた写真を残すのみ。
あなたが定年退職で隠居を決め込むころには、過去の栄光はすっかり色褪せたものとなっていました。
当然です。宇宙開発ラッシュが進み、宇宙飛行士など珍しくもない存在になってしまってのです。
いや、それどころではありません。宇宙飛行士のなり手さえいないとゆうのが近年の状況なのです。
宇宙ステーションの完成、火星有人飛行の成功で一気に人類の宇宙へかける夢は爆発。
信じられないスピードで宇宙開発が行われるようになりました。
しかし、宇宙開発が活発になってくると、宇宙え飛び立つ人のほとんどは、宇宙工場やコロニー建設に従事する技術者、職人、工員とその家族で、この人たちにとっては宇宙船は単なる乗り物に過ぎません。  つまり乗客なのです。
緊急時の注意事項などの説明を直前に受ければ、それでOK。
あとはただ、目的地まで快適な宇宙旅行を楽しみたいのです。
そういった乗客までも宇宙飛行士と呼ぶから話はややこしくなります。
いきおい巷には宇宙飛行士が増え続け、またたく間に宇宙飛行士という職業から以前のステータスはなくなってしまったのでした。
なんせ、母親に抱かれた赤チャンまで宇宙飛行士になちゃうんですから。
考えても見てください。 まだ宇宙が未知の空間であったればこそ、月にも火星にもロマンがあったのです。
それが現実に働き、生活する場となったら、こんなに窮屈で不憫で危険な場所はありません。
いくら快適なコロニーができようとも、地球の方がいいに決まってます。
宇宙空間など3K職場の最たるものです。
そうです、なり手の少なさをなんとか宇宙飛行士という美名で隠してやりやりくりしているのが現状です。